Divert !! (ページ8)

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しかもまだジリジリとそばに寄ってくる。
こっちが女性なら完全に勘違い案件だ。
俺だとセクハラ！とか言われるやつ。
なのに…彼は全く嫌味のない純粋な可愛らしさで迫ってくる……柔らかないい匂いまで纏って。
元来、人懐っこいのか？

えと。例えるなら？…あ、犬、しかも大型犬！

はにかみながら後頭部を掻く姿もたまらなく可愛い。白い肌は照れると本当に耳まで真っ赤に染まる。
いやいや、びっくりしちゃうぜ。ここまで《可愛い》と思える三次元男性を見たことがない。
俺よりデカいのに。

『俺、プライベートのコミュニケーションはそんなに上手くないんです。仕事上では頑張ってますけど。
とにかく、俺からもありがとう。以前のことを憶えていてくれて、しかもお礼だなんて…嬉しいけど照れるなぁ。
コックピットもクイズ参加されるなら、次はもっと難しい問題考えなきゃ〜！』

『んふふ…その時は俺も一緒に問題考えます。』

ん〜っ！イイ奴〜っ。

『俺、今ナナハチへの移行訓練してるんですけど…あ、時間だ！！あの、国際線デビューしたらよろしくお願いします。』

『こちらこそ。楽しみにしてますね。』

鞍田くんは急いでキャリーを引き、歩き出しかけてまた振り向いた。

『榎野本さんと一緒に空飛べるように頑張りまーす！！待ってて下さいね！』

俺に向かって、大きくぶんぶん腕を振る。
こちらも小さく振り返すと満足したのか、ニコニコの余韻を顔に浮かべたままあちらの搭乗口へと消えていった。

『……私、その便乗りたくないわぁ。』

あ、やっぱり？
黙って聞いていた若月さんの呟きに、また苦笑だ。
《憑いてて》《惜しい》フライトなんて誰も乗りたくないよね。

…が、嶺岸さんは何故か力強く両手を握り、勢いよく天を仰いだ。

『…………も、も、ももももも……。』

…《ももも》？

『も、ももももっ…萌〜え〜るぅぅうっ！！』

『…っ！？』

な、ナンダナンダ！！何がどうした？
新人CAの突如の変貌ぶりに、開いた口が塞がらない。

『可愛いチーフCAと可愛い副操縦士…どちらも色白ビジュ最高スタイル最高２人並ぶと尚最高！見てるだけで白ごはん３杯っ！！
本当はこんな大きなエアラインでCAとして生きていけるか不安でしたけど、嶺岸まなみ、ただ今フツフツと灼熱のやる気がみなぎってまいりましたぁぁぁああっ！』

『……はい？？？』

若月さんと俺の二重唱の疑問符にはお構いなしに、嶺岸さんは身体を捩れるだけ捩らせている。