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……そうか〜。あの時の…。
あれは、あのチームが寛大だったからできたことだった。
通常、うちの会社のCAアナウンスには規定のフォームがあるからあまり逸脱したことは言わないのだけれど。しかも、基本的にチーフCAしか機内アナウンスはしないものだ。
でも、その時のチーフが応援乗務の俺の意見を取り入れてくれて、チーフ資格を取ったばかりの俺に任せてくれた。チームのみんなも問題を考えてくれたっけ。
実は修学旅行生が団体で乗ってたんだよね。大々的に修学旅行中止が叫ばれる直前。目的地は目の前なのに１時間以上降りられない状況で、苛立ちや不安感が高まっていたし、この年齢層はやたら不安が広がりやすい。泣きそうな女の子たちまでいた。
で、チームでささっと相談して……機長にも許可は取ったけど、後から《私には問題が簡単すぎたわよ？》と笑われたな。そりゃ操縦士には当然の知識だもんね。
だが、新しい知識は人間の好奇心を刺激する。
好奇心は思考能力を高め、楽しむ意欲となり、幸福感を生み出す神経伝達物質ドーパミンを分泌する助けにもなる。
で、自分の命への不安は勿論その後の予定への心配で頭がいっぱいになったお客様の心を安定させるには、難しすぎないくらいの知識が丁度いいかなって思ったんだ。
ま、笑ってたし。操縦士にもCAたちの気持ちは届いてたってことでいっか。
『……とにかくなんとか着陸できましたが、俺が気付いた時にはもういらっしゃらなくて。お礼も言えず残念だったんですよね。…ああ、やっとお礼が言えた！』
そう言いつつ、彼はまたもや俺の手を両手で包み込みぶんぶん上下に振る。
それからびっくりする俺の顔を見て、アッと小さく呟き、また手を離した。
『…また触っちゃった。嬉しくてつい…。』
『気にしないで。さっきは俺のほうから急に声を掛けてしまったから驚かれたみたいだったし。
なんでかなぁ？何故か、あなたにひと声掛けたくなっちゃったんですよね〜。』
『……え、まさか超能力者？運命の赤い糸？？』
『なんでだよっ…あ、すみません。』
『…いえ！なんか親しくなれたみたいで嬉しいです。長らく会いたかった人とこんなに一気にお近付きになれたっていうか。流石CAさん。コミュニケーションがお上手ですね。』
いやいや、今のツッコミを誘発したのは君のボケであって……。
てか、心の距離はさておき、さっきから実距離が近いかも。パーソナルスペースの概念吹き飛ぶくらいの近さだぞ？？
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作者名：みあん | 作成日時：2022年9月13日 7時
