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看護士さんが去って、アメリカの医療ドラマみたいな狭い病室には寝かされている俺と鞍田くんの2人きり。
白いTシャツに制服のズボンといった服装を見ると、まさか宿泊先のホテルに寄らずについててくれたのか?


『…良かった。バイタルも異常なくて。あ、何か飲みますか?俺、カフェラテなら持ってますけど、何か買ってきましょうか??』

『……鞍田くん、ずっと一緒にいてくれたの?』


鞍田くんは小さな水筒を持って俺のそばの椅子に座り、コクンと頷く。

『………遼さんが倒れたって聞いてびっくりして…機長がそんなに仕事が手につかないくらいなら行ってこいって。』

『え…移行訓練中にそんなことしたら評価が…!』

思わず叫ぶと、そっと俺の唇に鞍田くんの人差し指が触れる。

『ともに飛ぶ仲間を思う気持ちもパイロットに必要な資質だと言って許して下さいました。
《飛ぶことは絆の顕れでもある》って。
君は仲間への思いをきっちり飛ぶことに昇華できていたと仰ってもらえたので、大丈夫です。』

そうか。町井機長は厳しいだけの人じゃないんだ。ちゃんと鞍田くんのことを見てもらえて良かった。


『………ん。素人目から見ても、とても素晴らしいフライトだった。機長と息を合わせて、あの雲の波を1番影響が少なそうな最短距離で乗り切った時なんかワクワクした!鞍田くんなら、訓練も乗り切れる。』

『…………遼さん。』


鞍田くんの長い睫毛がふるりと揺れた。
あんまり美しく微笑んでくれるから、なんか気恥ずかしくなる。


『…あ、ご飯行けそうになくてごめんね〜?本場のタイ料理ご馳走したかったんだけどさぁ!……あ、あの、もし良かったらさ、日本に帰ってから…。』

『……カフェラテ飲みませんか?ご飯代わりに機内で入れてもらってきたんですけど。』

『ぅええっ?ご飯食べてないの〜?!行ってきて。俺はもう大丈夫だし、ホテル帰って疲れ取らなきゃ…。』


鞍田くんが少しだけ苦笑した。
かと思ったら、2人きりの状況に完全に動揺してる俺の上に、突然彼の身体が覆いかぶさってくる。
指で顎を少しだけ持ち上げられて、そっと唇を合わされた。


『…ちゃんと、俺に恋してくれますか?』


パーソナルスペースなんて概念が吹き飛ぶほどの、唇が触れ合う距離で鞍田くんの声が聞こえる。
もう一瞬で身体がとろけていく。
至近距離で見るその榛色の瞳はとても透き通っていて美しくて…ああ、吸い込まれそうだ。


『…………俺も…とっくに恋しています。』

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作者名:みあん | 作成日時:2022年9月13日 7時

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