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まただ。ぎゅぎゅぎゅぎゅっとまた胸を引き掴まれる。
コイツ、俺の心臓をどうするつもり?きゅんきゅんしすぎて足の痛みも吹き飛ぶわ!

うう〜〜〜っ。コックピットに入れるものなら飛び込んでって今すぐ抱き締めたいっ!!
か、可愛い、可愛すぎるぞ、大型犬!!


《ふふ…まぁ、君と約束したからと歯を喰いしばってるらしい。スタッフへの信頼は彼の訓練にも重要な意味を持つ。…友情もな。ありがとう、榎野本さん。》


……友情……そ、そうか。友情…だよね?
機長のひと言に一瞬で頭が冷えた。
危ない危ない…鞍田くんに確認するまでは気持ちを動かすな、俺。
あ〜っ、誰か俺の恋心のガイドやってくんないかなぁ。いちいち間違った方へ引き摺られて、勝手に一喜一憂してんだよなぁ。


だけど……こちらもお礼を言って内線を切ろうとした時、間髪入れずに鞍田くんの声がした。


《……遼さんっ…頭蹴られてたけど本当に大丈夫なんですよね?》


少し声が震えている。
移行訓練中にそんな気弱なことを言うなって。内面も…精神的な強さも判定されちまうんだぞ?有事にどれだけ冷静に対処できるかは1番大切な…。

……いや、鞍田くんはそんなこと勿論分かっているはずだ。
それでも俺を心配せずにはいられなかったのか。

俺は精一杯の明るい声で鞍田くんに話し掛けた。


『大丈夫です!心配してくれてありがとね。言ってたでしょ?俺、《イトオシイCA》だけど飛行機運だけはあるって。残った俺の運は全部鞍田くんが使って?…いや、運で飛ぶなんて言ったら機長に叱られるかぁ。

……お互い、いいフライトにしましょう!で、一緒に美味しいご飯食べましょう!』


一緒に飛んでるんだよ?

俺も、俺たちも…君たちとともに飛ばしている。みんなでこの機を飛ばしているんだ。
だから、こんなハプニングに負けないで!


そんな気持ちを込めた俺の言葉に、鞍田くんははっきりと力強く応えてくれた。


《……はい!》


そっと受話器を壁に掛け、大きく溜め息をつく。
…伝わったかな?

気付けばいつの間にか後ろにいたキタヤマさんが笑っていた。

『《イトオシイCA》って上手い!』

『俺が自分で言い出した訳じゃないですけどね。』

『確かに《惜しい》っすよ。 CAさんにしとくのはね。できるならスカウトしたいっすわ。』

そっちの《惜しい》だとは思わなかったぜ。
少し俺より背は低いが、ガッチリした身体つき…幼い顔だけどよく見たら色気のある綺麗な顔。
この人いくつなんだろ?

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作者名:みあん | 作成日時:2022年9月13日 7時

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