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『…立てますか?あちらのシートで手当てを…。』
手を差し伸べ俺の腰を支えてくれたのを丁寧に断った。
『……頭を蹴られたので少しじっとしておきます…後は足を刺されたくらい…あ、あと、あんまり安心したんで腰が抜けてるかも。』
『血はあまり出てませんね?コレ感じます??』
足の親指の先をくすぐられて思わず身を捩ると、第2のチャラめスカイマーシャルはうはは〜と笑う。
『神経も大丈夫かな?…腰抜ける気持ち分かりますよ。俺もさっき人質取られた時はヤッベと思って焦ったっす。あ、すみません、それは内緒でお願いしますね。』
『……俺も、腰抜けて立てないのは内緒にしといて下さ〜い。』
彼はその言葉にニヤリと笑い親指を立てた。
『ナイスファイトっす。…てか、命があって良かった。無茶すんなって言いたいけど、あの女の様子見たらいいとこイッてたみたいっすね。相手がダイハードじゃなかったら、もう勝負ついてたのに。
あの足…急所ばかり攻撃してますが、何処の道場っすか?師範持ち??』
サムズアップで返しながら曖昧に笑っておいた。
《ネットで1番近いとこ探しました、習い始めて3年目》…とは言えないくらい感心してくれているからだ。
……ん。しばらく謎のままにしておこ。
それにしても、不安材料はまだ山ほど残っている。
『キタヤマさんの…えと…相棒さんは…?』
『…出血はなんとか止まったそうです。』
キタヤマさんは少し固い表情になり、それから力尽きた《おばあさま》の足まで拘束してから乗務員を呼んだ。
駆け寄ってきたCAたちは泣きながら俺の手当てをしてくれる。
『……チーフ〜!無茶しないで下さいよぉっ。』
『うっうっ…こ、こんなに怪我しちゃって…。』
『もぉ…チーフ、《惜しい》んだから《惜しい》らしくしててくれなきゃ…死んじゃうかと思った〜っ!』
いつもは貴婦人のような女性CAたちが、鼻水垂らしながら泣いているところを見ると、よっぽど怖くて不安だったんだ。
とてつもなく申し訳なくて、場を明るくしたくて。にゃははと笑ってみせた。
『ごめぇん。泣かない泣かない、メイク落ちるよ?』
『ヤダ〜っ!!』
あ、余計泣いた。
『……それよりCAが人質になったって…誰?怪我はない?』
『嶺岸さんです〜っ。あの子もスゴイ度胸でした。背後から顔にナイフを突き付けられたんですけど、隙を見てヒールで思いっきりそいつの足踏ん付けて…。』
……嶺岸さん、かなりの大物になりそうだな。
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作者名:みあん | 作成日時:2022年9月13日 7時