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勿論全て対応する。
充分機内サービスの一環に入る要求だ。例え舌打ちされながらでも。

『…あの、ついでに私もお酒下さい。』

そうこうしていると前の座席の男性客からも声が掛かった。

『日本酒で宜しゅうございますか?』
『はい。辛口?』
『ご用意ございます。』
『じゃ、それを!』
『…オレモクダサイ。』

それを聞いていたH40のお客様も手を挙げた。
ワインと日本酒の二刀流。呑む気満々のようだ。勿論呑むのは構わないのだけれど、機内は気圧の関係で酔いやすいという。


『ごゆっくりお過ごし下さい。』

一応願いは全て叶って彼はゆっくり頷いた。
ひとつ隣の日本人らしきお客様は素知らぬ顔でご飯を召し上がっていたが、俺の顔を見て気の毒そうに眉を顰めた。
今のところ、特段に我儘な訳でもないので大丈夫なのだが、彼にもニッコリと微笑んでおいた。



ナナハチのギャレーは3カ所あって、それぞれにCAが待機しており、お客様の要望に対応する。
最前方ファーストクラスのギャレーまで巡回して、変わったことがないか確認した。
機体自体は順調に水平飛行を続けている。


気付くとついついコックピットの扉を眺めていた。この向こうに鞍田くんがいることを思いながら。


本人に言えなかったけれど、鞍田くんの国際線デビューに立ち会えたんだなんて思うと、なんだか嬉しくてニヤニヤしちゃうな。

……話せたら、たくさん褒めてあげよう。安全で穏やかな飛行ができていたと。まだ着いてないから油断は禁物なんだけどさぁ。

コックピットには2人の操縦士がいて、全体的な責任者はやはり機長になる。それでも、機長のアシストをちゃんとして息を合わせる副操縦士がいるからこそ上手く飛べるんだ。《ツイテる》だけじゃ安全も穏やかな飛行も守れない。
鞍田くんの努力がしっかり感じられるフライトだ。


ようやく航程半分くらいか。
頑張って。キャビンのことは俺たちに任せて!
そっとドアに向かってサムズアップする。

……お互い、いいフライトにしよう。
そんな気持ちを込めて。


……と、その時、微かにコココンと遠く軽い音が聞こえた。コックピットから??

何かあったのか…とビビってコックピットと繋がる内線電話を見たが反応はない。緊急事態ならどちらかが連絡をくれるはず。
近年の操縦室のドアはハイジャックを防ぐ為に分厚く特殊な構造になっているんだけど…確かに音はこのドアをノックした音だった。

ん〜。緊急事態ならノックをすることはないよな。

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作者名:みあん | 作成日時:2022年9月13日 7時

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