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俺は携帯を切ってポケットに入れた。
ニカはいいと思ったらちゃんと褒めてくれるからありがたい同僚だわ。
なんかまた気持ち良く仕事に励めるぜ。


俺のしたことで1人の少年が飛行機を好きになった。直接お礼を言われたのはサービス担当の俺だけど、それはつまりこのエアラインを好きになってくれたってことでもあって…。
逆に言えば、サービス担当の俺のせいで、飛行機を見事に飛ばす為に努力と研鑽を重ねているスタッフ全てが嫌われてしまうこともあるということ。


…ん。改めて気合い入ったわ。


『…榎野本さん?いい加減動いてくれませんかね?』

ハッ!!その苛立つ声にぎゅんっと振り向くと、若月さんと新人の嶺岸さんが睨み付けていた。
わ、忘れてた。俺が引率してたんだった。

『あ、んはは〜っ!ごめんごめん!!ニカからでさ。実はね……。』

歩きながら話すと、彼女たちは呆れたように笑う。

『ったく〜。その話、先輩に聞きましたよ?男の子があんまり嬉しそうで、周りの人まで楽しそうだったから、ドリンクサーブがちょっと時間押したって笑ってらっしゃいました。』
『《イトオシイCA》ってナイスネーミングセンスですね!誰が言い出したんですかぁ?』

『いやはや、かたじけない。てか、そのあだ名ってさ、何処まで浸透してんの?OVSのCAだけだよね?』
『………ムフフ。』
『何、その含み笑い?え?まさか国内線も??』
『ムフフフフフ。』

不名誉なあだ名の行方に思わず焦った。
おいおい…おしゃべりスズメさんたち、勘弁してよ〜!!


『……あ、あの人。』

そんなことを考えながら歩いていると、後ろの若月さんがふと呟いた。

搭乗口への通路に立っている1人の男性。
制服は操縦士…肩に入っている線は3本。コ・パイかな?
紫外線浴びまくりの操縦士にしては何とも色の白い…遠目にも綺麗な肌だ。


『榎野本さんは《イトオシイCA》ですけど、あの人は《ツイテるコ・パイ》って言われてるんですよ?』
『《ツイテる》??』
『何か悪いモノが《憑いてる》みたいに、彼が飛ぶと何かハプニングがあるんですって。でも《ツイてる》くらい運もいいから切り抜けて帰ってくるって聞きました。』
『へぇ〜。よく知ってんね?』

『合コン…じゃない、他部署ミーティングで教えてもらいました。ナナロクですけど、今ナナハチにチャレンジしてるとか。』

わお。それはなかなかハラハラドキドキだな。
長時間の国際線でいつもハプニングあるのは怖すぎるぞ?

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作者名:みあん | 作成日時:2022年9月13日 7時

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