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彼がふわふわと歩く姿にちょっと見惚れながら、訊いてみた。
鞍田くんはちょっと迷ってから話し出す。

『また重症のお客様がいらして…心臓だったのかなぁ?胸を押さえて苦しんでらしたとか。でも福岡空港は天候が悪かったので北九州にダイバートしました。』

『《また》??』

そのフレーズ入るだけで、乗務員に忌み嫌われそうだな。

『俺のフライト、やたらに妊婦さんが産みそうになったり、発作が出たり…あと天候悪かったり。
…で、付いたあだ名が《ツイテるコ・パイ》だそうで。』

『…ま、ままあることですけどね。んはは〜。』

…ねーよ!そんなにホイホイ重症のお客様に当たることはありませんって。
やっぱりお祓い行っとけ、鞍田くん!!

心の中て自分で自分にツッコミ入れながら、ウンウン頷いておいた。
鞍田くんの表情にはまだ陰があるが、俺の言葉に思い切ったように話を続ける。


『……俺、空飛ぶの大好きだし、子どもの頃から飛行機大好きで。グラウンドスタッフ経てやっとパイロットになれたんです。
……でも、俺が飛んだらお客様が困ることあるって致命的っていうか。その内、《ツイテない》ことになるんじゃないかなんて思うとナナハチ目指していいのかなぁって、昨日はちょっと考えちゃいました。
勿論、そんなことないよう、勉強頑張ってるつもりではあるんですけど、なんか気持ちが追いつかなくて。』

移行訓練で頭がぱんぱんになっているせいかもしれないな。
脳と身体の疲れは精神にも影響するもんね?


……なんだか彼が積極的に俺に近付いてくる理由が分かった気がした。
身近な人にほどこんなマイナス思考な悩みは打ち明けにくいのだろう。仲間内にはいつもの自分でいたいこともある。
だから、そこそこ悩みの重大性が分かるけど、あまり関係のない俺に聞いてほしかったんだ。


『まあ…それはなかなか…でも、それだけ緊急事態に遭うとか代替着陸するとか上空待機とかしてたら移行訓練には役立つかもしれませんね。かなり判断力養われてるでしょ?』

『それっていいことですか??』

困惑した顔で俺を見る姿は落ち込んでる大型犬…しっぽ垂れてるぞ〜?
とてつもなくナデナデしたくなるのを懸命に抑えて、俺は明るく笑う。

『それだけの数、機長判断を見てきたんなら自分が判断する時に必ず役に立つ!教科書やシミュレータなんか比にならないくらいの生きたお手本じゃないすか〜。経験しようと思ってすることじゃないんだもんね?』

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作者名:みあん | 作成日時:2022年9月13日 7時

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