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『京都まで行くの大変ですけどね〜。あそこは特急止まらない駅だし。』
『行ったことあるんですか?』
その駅で初めて降りた時、その空の広さに感動したことを思い出す。
『はい。何度か。近代的な小さな神社で…あ、駅からは歩いて5分くらいなんですが。
中学の時、徒然草で頂上に本当の有名な八幡宮があるのに下の地元のお社と勘違いして上には登らなかったっていう話習ったでしょ?何事にもガイドは必要だって話。あの八幡宮の近くなんで色々見て回りました。』
『あ〜、それ憶えてます!!そうか、あそこの近くなんだ!』
『二宮忠八は愛媛の八幡浜という場所にいたんですが、終の住処に選んだのは同じ八幡という地名で…愛着があったんでしょうね。飛行器発明にかけた青春の場所に。』
日本の航空の父と言われる二宮忠八は、ゴム動力で飛ぶ有人《飛行器》の原理を模型にまで落とし込んでいたが、資金も足りず軍の許可も下りず、人類最初の有人飛行機は作れなかった。
もし、彼が最初に飛んでいたら、今の飛行機業界は全く違う様相を呈していたのかもしれない。
だけど、歴史は変わらないし、日本人はその時流の中でまたより良いものにチャレンジすることが得意だ。
過去を嘆いてばかりじゃ前には進めないんだから。
『青春か。俺は今青春真っ只中ですけどね。ほんと、色々ガイドが欲しいことだらけかも…。
……あ、あのぉ、立ち話も何なんで、良ければ何処かでご飯しません?カフェでもいいし。』
…ハッ!!
《居酒屋→お持ち帰り》はマズい!!
妙な図式が頭に浮かんで、思わずカフェを選択した。
『俺んちの近くでいいですか?コーヒー美味しいですよ??』
そこは素直に従う。そこまでこだわりはないし、コーヒーといえばコンビニでテイクアウトするほうだし。苦味があるほうが好きかな?
だけどキンキンに冷えてるブラックであることが条件なくらいだから、場所は何処でも構わない。
俺たちは連れ立って歩き出した。
鞍田くんは足が長いからもっと速く歩けるのだろうが、俺の歩幅に合わせてゆっくり歩いてくれる。
…鞍田くん、私服もいいな。地味なグレーのゆったりTシャツ細めの黒いパンツという至ってシンプルな服装だけど、自分に似合うものをよく分かってる。無理しない自然体…そんな言葉がピッタリだ。
俺はアニメT…いや、自信持て、俺。ジャパニーズアニメは世界一!
『ところで、福岡便で何があったんですか〜?お祓いに行きたくなるようなことでしょ??』
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作者名:みあん | 作成日時:2022年9月13日 7時