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……ま、そこは気楽っちゃ気楽だ。仕事に打ち込めるからね。

今はとにかく、毎回お客様が笑顔で飛行機から降りていただくことを目標に頑張るだけ。
空の旅は人間が生み出した奇跡なんだから。
お客様には楽しい時間を過ごしてもらいたいもんな。


時間通りに無事故で、尚且つ良いフライトだったと思われる為には、完璧な機体、完璧な手入れ、完璧な操縦、完璧な管制、完璧なサービス…様々な職種の人間が完璧に仕事をして連携しなければならない。
人間の能力の《粋》を集めなければ、1機の飛行機も飛ばすことはできないのだ。


俺はそんな仕事の一端にいる。
そんな誇りに突き動かされて、この日々を生きている。


ふと携帯がぶるりと震えたのを感じた。キャリー片手に空港を今日の搭乗口まで横断しながら、ポケットから携帯を取り出す。

《今、お客様から遼に苦情が来た!》

同期のニカから電話と画像だ。

《説明めんどいから画像見て。》

……んん?送られてきたのは子どもの落書き??


『何コレ?』

思わず立ち止まって画面に目を近付けた。
眼鏡掛けても分かんねーな、コレ。

《こないだお前が乗った便でさ、初めての飛行機でグズる男の子あやしたり遊んだり写真撮ってやったりグッズプレゼントしてやったりした?》


あ〜、耳がキーンとして怖くなって泣いちゃった子か。幼稚園児って言ってたな。

航空性中耳炎は、鼓膜内の空気が飛行機の離着陸による急激な気圧の変化の影響を受ける為、鼓膜に痛みや炎症が起きる症状だ。鼓膜の内部は咽頭部と繋がっているから口内を動かしたりして耳管から空気を抜けば、普通はさほど酷くはならない。

空気を抜きやすくする為に飴とジュースあげて、あくび体操をしても泣き止まないから俺も大好きなピカモンの話をして盛り上がったっけ…。
他の大人のお客様までピカモンの話に入ってきちゃって、先輩にサーブができないと脇腹つねられた時の子ね。


『この黄色いの、ピカンチューかぁ。』

《その子がまた遼に会いたいから飛行機乗せろって毎日騒いで困ってるってさ。へへっ…まあ、いわばお礼のお手紙とその子が描いてくれたお前の似顔絵よ。良かったじゃん。》

コロコロ楽しそうに笑うニカの声に、思わず笑みがこぼれた。

『そか…良かった。飛行機、好きになってくれたんだ〜。嬉しいな。わざわざありがと、ニカ。』

《実は大窪さんにその話聞いてたからな〜。お前のロッカーに貼っとくわ。返事書いてやって。行ってらっしゃ〜い。》

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作者名:みあん | 作成日時:2022年9月13日 7時

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