ひとくふう荘 10 (ページ49)

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《……先程の地震の震度は〇〇県北東部で震度５…体育館周辺は震度４…尚地震の影響により京央□□線…線、ガガガ…線は点検の為ガガ…全線停車しています…。》

…あ！ウグイスさんだ！
待って！！ちょっとだけクラタさんとお話しようよ〜！ご自分の言いたいことだけ聞かせてすぐに消えちゃうのはふぇあじゃないよぉぉぉ！？
たまには聞いて差し上げてよ〜っ。

《………ふぇあジャナイ…トハ？》

『…はい！いつも僕だけ教えてもらって助けてもらうのはフェアじゃありませんっ！僕にも言わせて下さい！！』

ウグイスさんのちっちゃな呟きにクラタさんが喰らい付いた。

『今度は僕があなたを助ける番です。哀しみに囚われたあなたの思い出を変えたいんです。

…僕はこの体育館に来る度に、あなたの声に助けられてきました。それどころか、何もハプニングがないほどうちの会社やイベントにはありがたいことのはずなのに、何か起こってくれればあなたの声を聴けるとさえ思うようになってきた。
何の因果か、僕とあなたは共通の哀しい過去を経験してしまいましたが、そのおかげで僕はあなたの声に出会えました。
本当のあなたはもうお幸せに生きてらっしゃることを願っていますけど…。だから、記憶のあなたももう幸せになってほしい。

さっき、あなたは《守れなかった》《何もアナウンスできなかった》と言ってましたね。
……でも違うんです。あなたは確かに叫びました。《地震です！地震です！》って。それはあの仕事に誇りを持っていた人にしてみれば、何も言ってないに等しいことなのかもしれない。もっと冷静に体勢指示や避難誘導をするべきだったのかもしれない。

けれど少なくとも僕の父と父のチーム仲間は、あの叫びで咄嗟に天井のパネルが落ちそうになっていることに気付いたし、僕は家族を父の代わりに守れました。
亡くなった方がいらしたことは残念だったけれど、あなたが救った命もあったんです。』

クラタさんのお目目は何もない宙を見つめていた。
けれど、それはとても真っ直ぐで強くて優しかった。

『……そして、今日…またあなたは僕たちを救ってくれた。
地震が来る前に教えてもらえたので、ステージ上でリハをしていた演者がステージから落ちずに済みました。結構端のほうでダンスがあったらしくて…本当にありがとう。』

…おお？そうなんだ！
あなたの声がたくさんの人をお助けしたんだねぇ。
勿論、情報を活かす早い行動がなければ、情報も無駄になるのだけれど。