ひとくふう荘 10 (ページ42)

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…で、散々記憶さんに憑依されてきたはずのニカさんが、何故か質問しようとした時。

……あら、地震です。深い…広い…気付かないくらいの揺れだけど。

《……ガ、ガガ…地震速報がありました。ガガガガ…県北東部…ガ…深さガガ…キロメートル、マグニチュードは４.３。余震にご注意下さい。》

ピクピクッと僕のお耳が反応しちゃう。
…来た。このお声だね。

普通の放送やお電話じゃないのは分かるの。
電気通信に変換される音ってね、電波に変えられる時に生の音に１番近い電波の音に振り替えられるから、僕たちのお耳には少し違う音に聞こえたりする。でも、このお声は電波に乗ってないの。すぴいかあを通していない。
ということは…。

クラタさんもハッと黙り込んだ。クラタさんも聞こえたんだね？
つまり、このお声はクラタさん含め、クラタさんの近くで鳴っている音ってことになる。僕にも聞こえる範囲で。

『また聞こえました…今度は地震だそうです。多分〇〇県でマグニチュード４.３。
……やっぱりわんちゃんにも聞こえるんすね。今、耳がピクピク動いた。俺だけじゃない…現実なんだ。』

僕はお返事の代わりにしっぽをゆらゆら揺らした。

『本当ですね。その通りに携帯ニュースにも出ました。かなり正確な情報…その記憶は情報収集に手慣れていて、しかも声のプロ。アナウンサーや管制官、交通局…後は…。』
『そんな職種は結構あるけど、この場所でってのがカギかもな。』

『…ニカ？』

あ…ニカさんも何か感じたみたい！顎にお手手当てて何か考え込んでる。

『俺も聞こえた…《気を付けて》って。《みんな、無事でいて》って……。』

ニカさんは不思議体験の隠れせみぷろさんだった！キタヤマさんの陰に隠れがちだけど、結構見えないものが視えることが…ちゃんねるが幅広いんだろうなぁ。

クラタさんはびっくりしてます。

『俺はそこまで聞こえませんでした！！』

《みんな無事でいて》？
クラタさん個人の心配じゃないの？？
もしかして、クラタさんは《コウホウ係》なのかも。

……ふむ。さて…どうしよう？
いつもならお鼻やお耳で情報収集できますけど〜。今回はお耳だけが頼りで、しかもあちらが言いたい時だけしか聞こえない。キツネさんに来てもらってクラタさんを覗いてもらっても、きっと何も出てこないし、今日はもう記憶さんは出てこないかもしれないし。

『この体育館…昔、崩落事故がありましたよね？確か地震で……？』

ガヤさんが呟いた。