ひとくふう荘 10 (ページ41)

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『あ、どうも。蔵田と申します。このライブのディレクターしております。
あの…不思議体験のセミプロの方はどちらで…。』

『《不思議体験のセミプロ》〜っ？？？』

お３人ともお目目パチクリ。

あらら。タマさんてば、説明せずにミヤタさんを追って行っちゃった。
………ま、いっか〜！！

ということで、しばらくしてタマさんがニッコニコのふわふわでお帰りになったので、キタヤマさんとガヤさん、ニカさんに経緯をご説明。

キタヤマさんは大きく頷いて、クラタさんを見た。

『俺たちセミプロ…っていうか、慣れてるってだけなんすよね、いわゆる不思議体験に。で、あくまでも慣れてる立場から言わせてもらうと、それ、幽霊ではないんすよ。
動物には生きてる限りは須らく思い出ってあるでしょ？霊魂は残らないけど、その記憶って世の中に漂ってるらしくて。特に誰かや何かを強く《愛した記憶》はね。
《愛》って動物の行動の原動力だからなのかもしれません。』

『…え〜と、記憶が魂ってことっすか？』

『いや…あ〜。例えば１人のＡさんがＢさんに初恋をする。親の反対を押し切ってまでＢさんとお付き合いしたけど別れちゃって、ヤケになって次はＣさんと軽くお付き合いした。でも、優しいＤさんと出会い、結婚して死ぬまで添い遂げた。
この時、Ａさんにとって強く愛した人との記憶がいくつか残る。Ｂさんを愛した記憶とＤさんを愛した記憶は確実に残ります。

普通はこの世に漂って、次の時節を創り出すエネルギーになるみたいなんすけど。たまに妖…多いのは古い道具に自我が芽生えて、長年その道具に蓄積した人間の思いを力に変えた《付喪神》…まぁ、妖怪みたいなもんですかね。記憶がコイツらの力を借りちゃう時があるんです。
すると、厄介なことに、記憶は強い思いを成就しようとする。本人は幸せに死んでたとしても、記憶は当時の気持ちのままなんで。

つまり、ＡさんがＤさんと出会って幸せになってても、Ｂさんとの《愛した記憶》は、Ｂさんとの不完全燃焼な愛を全うしようとするんです。

心霊現象のほとんどは、多分こういう記憶たちの…ついてこれてます？？』

『な、なんとか…じゃあ、この声は…。』

『蔵田さんが電波受信体質でないなら、その声の主の記憶か付喪神があなたに関わる……もしくはあなたがたまたま記憶の目的に合致する何かを持っているのかもしれません。』

クラタさんとニカさんはちんぷんかんぷんなお顔に……って、ニカさんも？？