ひとくふう荘 10 (ページ33)

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『んじゃ行こか。トシコちゃんは引っ越しの手続きあるから後で合流〜。体育館着いたら電話して？で、俺たちはワタのとこ寄って〜、積み込み手伝って〜…あ、ニカ、車のフロントに入構許可証出すの忘れずに。で、荷物出して〜…。』

タマさんがヨコオさんの書いた本日の段取りめもを読み上げてます。

……そう。もうすぐトシコさんお引っ越しなの。
寂しくなるね〜。
早朝のミヤタさんの叫びにも慣れたし、トシコさんもみんなの朝ご飯作るの上手になってきたし、僕へのネコタマさんのつんでれも味わい深くなってきたのになぁ。

なんて僕が感慨に耽っていると、キタヤマさんが俯いて呟いた。

『ミヤっちはもう行ってんだよね？みんなで写真撮る時間あるかな？？せっかくだしミヤっちの晴れ姿撮り、た…いや、けど、肖像権とか無理なら…まぁ要らねぇか。』

だんだん口籠もっちゃうキタヤマさんに、みんなはやいのやいの言い出す。

『ミツってさ、ほんと変なとこツンデレ。本人に言ってやれば？』
『チャラいんだか、照れ屋なんだか…。』
『えっ！？北山さんって宮田さんのこと…？？』

あ、トシコさんのお声にタマさんが反応しちゃった。

『……ミツ、まさか…？』

…ああ…ミヤタさんのことには敏感なタマさん…。

タマさんに余計な疑念を抱かれまいとキタヤマさんは必死で頭をブンブン振った。

『ち、ちゃうちゃうっ！！宮田の仕事場なんて行く機会ないし、宮田の１番カッコイイとこに立ち会えるなんてなかなか…あ、ちっが〜うっ！！！睨むな、タマ！
中高生の時なんかさ、あいつヲタクだからって笑われてた時もあったじゃん！落ち込んでたの知ってるしさ。それが今や声優アイドルなんだぞ？カッコ良くない？？
なんて言うか、俺は宮っちのそういう芯のある強さが好きっていうか、尊敬するというか…！』

…おおぅ。

『北山さん…言えば言うほどタマの疑惑が深まってるわ。』

タマさん…怖いから。
お顔がチベットスナギツネさんだから…。

『タマ、北山の宮田愛は父兄愛…仲間愛…ん？そうでもないか？？』
『聞いてみたら結構深い愛だよね？』
『た、タマさん…落ち着いて？』
『同居してて三角関係はあかん。泥沼が過ぎる。』

……きゃあ。タマさんがわなわな震えてきました。

『………ミツ、１回話し合お？』
『違うっ！！違うのよっ！そうじゃねぇっっ。みんな、助けてっ！！』

慌てふためくキタヤマさん。

………んと。どちらかと言うとミヤタさんのほうが心配かも。