ひとくふう荘 10 (ページ4)

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苦しそうなお顔で、キツネさんはぎゅうと僕を抱っこした。ぬくもりに強く引き寄せられる。

お答えはないようで、ちゃんとあった。
僕が小さな不安を捨てて、何かを覚悟するには事足りた。
う〜ん。まだ具体的に知ってはいけないのなら……ま、いっか。
きっと教えてくれるんだもんね。僕が知るべきその時がくれば。

…ねぇ？できれば、あなたのお言葉で教えてね？大好きなあなたから聞きたいの。
神様でも、お父さんでもなく、あなたから僕に教えてほしいな。僕は全てを受け入れるから。

《…………その役は私が必ず負うよ。約束だ。》

タマさんたちが呼びに来るまで、しばらく僕たちは黙って街と空を眺めていた。
何も考えずに、お互いのぬくもりだけをただ与え合いながら。

何があっても、最後に僕には信じられるものがある。短い犬の命を懸けても足りないほどに《愛された記憶》と《愛した記憶》。

雪はもう降らない。
冬は終わった。

…はふっ！！お腹がペコペコ〜っ。
ま、その時とやらが来るまでは、戦の準備〜！
ややこしいことはキツネさんに押し付けちゃった気もするけど、とにもかくにも《腹が減っては戦はできぬ》〜！

カリカリあすふあるとを掻きつつ、タマさんを引っ張りながら急いで朝のお散歩から帰ります。

『ちょっ…ドンブリ、こら…！』
『タマぁ、待って…。』
『いや、ドンブリがさ……お腹空いてんの〜？』

難しいこと考えたら、お腹空いたの〜っ！！

………あら？お家の前の道路に…ネコタマさん！？
お寒い朝は絶対お外に出てこないのに。

『アレ？ネコタマ…？？どしたの？』

タマさんも気付いて僕と駆け寄った。

《良かった！早く、早く来て！！トシコが…トシコが倒れたのっ。みんなで今…キュウキュウシャ呼んだり、色々…っ！俺、どうしよう！？どうすればいいの？ドンブリ、俺…っ！！！》

ニャアニャアとぱにっくしているネコタマさんを見て、タマさんは何かに勘づきリードを投げ捨ててひとくふう荘に飛び込んでいく。

少し遅れてきたミヤタさんが、代わりにリードとネコタマさんを拾い上げた。

『……何？何が…。』

驚いて呟くミヤタさんのお声に、僕も胸が詰まる。

……また思い出した。お父さんのこと。
今のネコタマさんは、あの日の僕だ。

タマさん…すぐに見つけたんだね？

《起きてきて、当番だから朝ご飯作るってえぷろんしてた。その時に膝から崩れ落ちて…。すぐに１階に走って叫んだらみんな出てきてくれたけど…。》