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う〜んと大きな伸びをしてお首をぐるぐる回しながら、ニカさんはガヤさんの後を追う。
『《たまたまたまたまたまたまたまたま》って１年分以上聞いたな！しばらくタマのことタマタマって呼ぶわ。』
『なんでだよっ！』
『んはは〜！呼んでもいいけど、ニカが恥ずかしいぞソレ。』
階段下に降りて行ったニカさんのセリフに笑いが起こる。
キタヤマさんも笑いながらおといれに立った。
『あ、キツネっち、忙しいとこ悪いけど後で畑付き合ってよ。俺たち結界の手入れとか仕組みとか分かんないし、おじさん帰ってくるまでに俺たちでできるとこ教えて？
今日みたいに家ん中侵入されないように、本当は畑だけじゃなくてこの土地全体的に結界張りたいなぁ…無理？？』
トシコさんは顎にお手手を当てた。
『妖相手の結界ならそこそこは効く方法はあるが、今の人間は感応する力が弱まっているし、記憶は結界を擦り抜ける。この前の鬼や今日の草紙のように、記憶と結び付いた妖は入ってこれるだろう。
何かしら新しい方法を考えるべきだろうねぇ。』
『了解。トイレ行ってくるわ。』
お話が一段落したようです。
タマさんは僕を片手で抱っこして、バルコニーに出た。
街を覆っていた雪雲がすっかり薄くなって、高さを増していた。
雲が切れた灰色の空には、冬の鳥さんたちが餌場から餌場へ移動する為に、新しい黒い雲みたいに群れを成して飛んでいくのが見える。
…春が来るよ、タマさん。
今年は畑にお豆植えるんだよね？
『………ドンブリ。じいちゃんのこと、好き？』
タマさんの目は、街の向こうのお父さんを見ていた。
それは、今まで自分が信じていた大好きな景色がニセモノだと知ってしまった哀しみと落胆の瞳。
……僕は、お父さんが大好きだよ。
お父さんが僕を作ってくれたの。
僕のお身体もお心も、お父さんがいっぱい。
僕の名はドンブリ。
僕の中には《幸せ》がたくさん入ってる。
まだまだたくさん入るけど、うにうにはお父さんなの。僕の土台にはお父さんの愛が詰まってるの。どんなすうぷや具材が載ろうとそれだけは変わることはない。
だから、どんな意図があったとしても…僕はお父さんを愛してるよ？
タマさんのお手手が、僕を抱き締めた。
強く、強く頬擦りされた。
その時、そっと他のお手手が伸びてきて、僕ごとタマさんをぎゅうっと抱き締める。
『……トシくん。』
お顔を上げて振り向くタマさんに、ミヤタさんは優しく微笑む。
『…まだ風が冷たいね〜。』
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作者名：みあん | 作成日時：2022年7月10日 1時
