ひとくふう荘 10 (ページ21)

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お気持ちは分かります。僕だって逃げられるものなら逃げ出したい。

でも、トシコさんはヨコオさんが新しく淹れてくれたお茶をひと口啜ると、ようやくお心の準備ができたみんなのお顔を見回してから…語り出してしまった………僕の運命について。

さて…まずこの話で重要なモノを２つ知っておいておくれ？

ひとつは《たま》と呼ばれるもののこと。
《たま》とは大切なモノのこと。

これの正体は私も知らぬ。神々の中でも知る方は少ないというよ。たまが《玉》なのか《魂》なのかも分からない。この国にいくつか《たま》は在るというが、正確にいくつ何処に在るのかも分からない。分からない尽くしだねぇ。

元はくにつくりの神が使ったとも、くにを生み出した力の源とも、たまつくりの神が作ったとも、とくさのかんだからのひとつとも、あめのすめらぎに授けられたモノとも…まことしやかに言われているが、どれもこれも憶測で果たしてどのようなモノなのかもさっぱりだ。

強大な力を秘めていて、存在するだけで国を安寧に導く力を持つともいうが、これまでにも戦は少なからずあったのだから眉唾ごととは思う。

……だがひとつだけ確かなことがある。
これが知っておいてほしいふたつめ。《たまもり》という《たまを守る》ことを請け負った者たちがいることだよ。

血の筋だけではなく、代替わりをする時にたまもりをしていた者が老若男女問わず次のたまもりを選んでいたというが、まぁ彼らの土地の中で守っていたし、秘密にしやすいからほぼ血の筋の者と聞いた。

それを守り伝え続けてきた筋のひとつが、タマモリ、フジガヤ、お前たちの筋なの。

ここからはお前たちの筋の話だね。

タマモリの家では代々己が土地に《たま》を隠し守ってきたが、この国が外の国と戦うようになり、国の中へ攻め込まれることが続いたある日、《たま》を守っていた結界が砲弾によって一部壊れてしまった。
すると、《たま》の力に引き寄せられる妖だけでなく、何故か《たま》の存在を知る人間までが現れて《たま》を狙い出したらしいのだ。

たまもりは妖とは昔から戦い続けているが、人間から《たま》を守るのはかなり勝手が違ったからその辺りからお前たちの筋の当主はさぞかし苦労を重ねてきただろう。
結界はあってもたまもりの素性と場所がバレていては、次々と襲撃を受けるしねぇ？

そこで秘密裡に代替わりを早々行うことにした。先代が囮になっている間に《たま》を移す為に。