ひとくふう荘４ (ページ46)

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僕はといえば、住んでいたお家の新しい匂いと、お父さんの匂いがなくなってしまった寂しさで、その日はやっぱりお父さんの枕にお鼻を突っ込んでた。タマさんたちが作業の合間にナデナデしてくれるから、鳴きはしなかったけど。

楽しげなタマさんたちのお声は、勿論嬉しかった。
でもあの時は、僕が旅を終えて帰ってきたのに、お父さんはここにはやっぱりもういない。そう思い知らされちゃった気がしてた。

やがて、夜もとっぷり暮れて、少しだけ湿った春の夜中の匂い。
４人はそれぞれお風呂に入って…タマさんがミヤタさんを誘ってご自分のお部屋でげえむ。
ガヤさんはソファに横になり、ヨコオさんはまだキッチンで水回りの整理をしている。

『…ワタ、言ってくれればやっとくから。俺の部屋行って寝ろよ。』
『たいちゃんこそ、自分の部屋で寝てきたら？俺、明日も昼からだしさ。終わったらソファで寝かせてもらうわ。』

作業しながらそう言うヨコオさんに、ガヤさんは小さく頭を横に振った。

『まだお客様だからな。ワタはベッドで寝かせてやるぜ？一緒に住むようになったら、床に転がって寝ててもマジ蹴飛ばして歩く。』
『せめてラグの上まで引き摺って？』

お２人は和やかに笑う。

『…ふふ。７人一緒に住むなんて、思ってもみなかったな？』
『…ふふふ。みんなでいるのは楽しいけど、個人の時間も大切な人間ばかりだかんな。いつ誰が出てくって言っても驚かにゃい。』

お皿をカチャカチャ重ねる音。
ガヤさんのふうっという溜め息。

『……そうかもね。千ちゃんがコロナになんなかったら、あのタマも絶対こんなこと考えつかない…この家が下宿屋だったのもスゴイ偶然。部屋が７つあるんだもん。まるで俺たちに用意されてたようにさ。』
『ミツがこっちの地域の小学校に異動になったのも、ニカがこっちに秋から異動になるのも…重なるもんだにゃ。』
『誰かが俺たちを一緒にさせたがってんのかもな。それくらいに偶然がマジ重なってるよね。』
『それか、運命？』

《ウンメイ》って何かしら？よく聞くお言葉かも？
何かのお約束？？

『運命信じるタイプだっけ？』
『そりゃあ、ちょっとはな。小学校から７人もの人数でずっと一緒にいるだけでも、割と奇跡じゃね？』
『……そうか。そうだな。当たり前すぎて気付かない運命か。』

ガヤさんは呟きながら目を閉じた。

僕は…僕とタマさんたちが一緒に住むことも《ウンメイ》っていうお約束なのかなぁ、って少し考えていた。