ひとくふう荘４ (ページ26)

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『トシ！』
『……ぐっ。』

タマさんは慌てふためいてミヤタさんに駆け寄り、とにかく秘密基地から離れようと、そのお身体をズルズル引き摺ってパンダもどきさんまで戻る。
高さはそこまで高くはないけど、普通のお家の２階くらいはあるのかしら。
やっぱ痛いよね？

『だ、大丈夫！？頭は？お尻だけ？腕は？？』
『……っ、くぅぅ…。ケツしんだっ！』
『…いや、生きてますぅっ。あー、もぉっ！！びっくりしたぁ！後でおちりナデナデしてやるから。』
『いやいや、そのナデナデ怖いわっ。』

よ、良かった…お元気みたい！

…ん？タマさん、僕のこと忘れてますね？

今です！
僕はウサギさんみたいにダッシュした。

『あっ！ドンブリっ！？』

タマさんごめんなさい！でもね、今のニカさんとお話できるのは、この中じゃ多分僕だけなの！

だけど、じゃんぐるじむの真下まで来て、はたと立ち止まる。

あれ？どうやって上ろう？

そしたら、急に身体がふわりと浮いた。

『ったくぅ。しょうがねーなぁ！』

タマさんだ。
タマさんが僕を抱き上げて、片手でじゃんぐるじむを上り始める。

『タマ、ニカの蹴り、気を付けて！！』

お尻を摩りながら、下でミヤタさんがタマさんにお声を掛けた。

『了解〜。蹴りと絞め技じゃニカには負けないけどねっ。…ドンブリ、分かった？今のニカはニカじゃないからね？？』

うん！

……と、その前に。タマさんたちは僕をどんな犬だと思っているのかしら？
分かんないけど、確かなことはこんな時に僕を渦中の最中に投入できるくらい、僕はタマさんたちに信用されているってこと。

…改めて、僕は理解した。
僕が彼らを愛する理由。

優しくて爽やかで仲良しで…勿論それなりに悩みもあって…そんな人間らしい可愛い姿だけじゃないの。
分け隔てることも決めつけることもなく、僕自身を見て、ありのままを受け入れてくれる懐の深さ。
ただはっぴいを目指す前向きさ。
出来そうで出来ないその強さと勇気が、僕を惹きつけるんだ。

踊り場に到着すると、緊張状態は更に高まっていた。ニカさんとセンガさんが対峙している。
ミヤタさんが落とされた隙に、広場に上がったセンガさんがお手紙を奪おうとしたみたい！
ニカさんはグチャグチャになったお手紙を握り締めたまま、センガさんに蹴りを次々と繰り出す。
鮮やかにその足を避けつつも、なかなかニカさんには近付けないセンガさん。ニカさんを傷付けたくないものね？

僕は、タマさんから広場へ飛び移った。