ひとくふう荘４ (ページ3)

今日:7 hit、昨日:1 hit、合計:16,669 hit

3 ページ3

『ども！センガです〜。ダンスライブに来ていただいた…憶えてます？』
『いやぁ、憶えとるよ〜！みんな大きなったねえ。男前になったやんか。…はあ、時が経つんは早いなぁ。俺が歳取るはずや。』

…ん？みんな結構お父さんとお知り合い？
タマさんガヤさんとちっちゃな頃からのお友だちだから、お父さんともお知り合いになるんだね。

『さ、晴れてはいますけど風があるので、まずは入りましょ？』
『ドンブリ、車椅子重くなるから降りて〜！』

はーい…。
もうしょうがないなぁ。でも、今日はべったりお父さんから離れないもんね〜！んふ。

僕がお父さんのお膝の上から降りると、ガヤさんが車椅子を押してバルコニーのほうへ。
いつもは階段が３段ほどあるんだけど、そこにおっきな板が置いてあった。
ちゃんと車椅子でもバルコニーから入れるように、ニカさんがお知り合いに作ってもらってきたの。玄関は上がりかまちがあるから、車椅子で入るの大変でしょ？

『おお〜、綺麗にしたなぁ。』
『中も結構変わってるよ？枠組は変えてないけど。後で下の階も見せたげる。』
『階段やろ？』
『お？男７人所帯の腕力を見せてやるぜぃ。』

そうそう、宮田さんなんか１人で男の人持ち上げてたから大丈夫。しかも片手で。

ガヤさんは上手に車椅子を押して軽々バルコニーまでお父さんを移動。お父さんはそこから見る街の風景に思わず目を細める。

『……ええ景色や。毎日見とったのにな……ええ景色や。』

みんなでちょっと街を眺めた。
秋の高い空の下、白く見える街は光って見えるね。たくさんの車や電車の音もする。鳥さんたちも時々白く光りながら飛んでいる。
お父さんと一緒にいつも見ていた景色。
久しぶりにお父さんと見るその景色は、なんだかとっても白くてピカピカだった。

センガさんが引き戸を開けてくれて中に入ると、そこはこおひいの匂いに満ちていて。
こおひい好きなお父さんを歓迎する匂い。

『お帰りなしゃい！！横尾です。お久しぶりでしゅ。』
『今日は２倍くらいカミカミじゃねーか。』

ガヤさんのツッコミに負けず、えぷろん姿のヨコオさんはこおひいをテーブルの上に静かに置いた。

『ありがとう、横尾くん。コーヒー飲みに行かせてもろたんが最後かなぁ。喫茶店は上手くやってるか？今大変ちゃうん？』
『おかげ様でカフェのほうは意外と。テイクアウトとかもさせてもらってまして。…まあ、まずは駆けつけ一杯。いかがでしゅか？』
『惜しいっ、また噛んだ！』