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その時、テレビにもう1人の影が映った。
気付いてない?…それじゃ、僕もまたひと工夫しなきゃ!


僕は、クウキセイジョウキの陰から、とててっとお部屋の中に入り込んだ。目立つように。
そして、ヒョロリさんに近付いていく。

『…えっ?な、なんで犬…?』

近付いてみて分かった。
やっぱりこの人、新館にいた。最初に受付する係の人!

『なんだよ、コイツ!犬キメーんだよ、入ってくんじゃねーっ!!』

犬が嫌いなの?こんなほてるの社長さんの子どもで、しかもお勤めしてるのに??

『シッシッ!っヤローっ!!』

今まで冷たくて無機質だったのに、初めてヒョロリさんの言葉の中に感情が入り込んだ。

よっぽど犬が嫌いなんだ。いや、憎しみさえ感じる。僕の周りにあまりなかった感情。

僕はまた近付いた。

さ、僕を見て!
テレビもセンガさんも見ないでね?

『クソぉぉぉっ!』

ヒョロリさんは、僕に向かって手に持っていたモノを向けた。

あ、ぴすとる!お父さんが見てたケイジドラマによく出てくる!タマさんとミヤタさんとセンガさんはもっとおっきなの持ってるよ。さばげえで使うんだ!お魚は使わないんだって。

…あ、そうか。だからセンガさん動けなかったのね?コレ、確か小石みたいなのが飛んでくるの。お身体にめり込むくらい痛いみたい。


……あれ?僕も危ないかも??


だけど、ヒョロリさんの指が動く前に、事態は動いた。

小石が飛ぶより早く、何かが飛んできてヒョロリさんの額にカコーンッとくりいんひっと。
お湯呑み!?コレは痛そうっ。


そして、ここからは全ての動きが早かった。

いつの間にか距離を詰めていたセンガさんがぴすとるを持っていた腕を掴んで捻り上げる。

バンッとおっきめの破裂音が聞こえた。
お耳痛い!!

それでもセンガさんは気にも止めずに彼の手首の関節を捻じ曲げ、ぴすとるを落とさせて足でソファの下に蹴り込む。

彼はもう片方の腕を振り回して、センガさんの身体を殴り付けようとしてるよ?でも、それをひょいと避けたセンガさん、一旦彼から身体を離してしゃがむほどに態勢を低く構えた。

『ぅわぁっ!!』

自分の強さの絶対的自信だったぴすとるを失ったヒョロリさんは、やぶれかぶれになって手許のマッサージ器でセンガさんに殴りかかっていく。
それを下から片手で受け止めたセンガさんがそのままの勢いで彼の顎に掌底を打ち込み、更に怯んだところを《一本背負い》!

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作者名:みあん | 作成日時:2021年10月26日 1時

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