ひとくふう荘３ (ページ38)

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カラスさんは、最後に街に向かって《クワァーーールルルッ！》と何度か切なそうに大きく鳴いた。

《何処にいるの？早く帰っておいで！！》

なんだか胸が締め付けられて痛くなるようなお声だった。

あなたたちは…ハシボソカラスさんだね。奥さんはあなたより小ぶり？

《ああ。けれど美しい鳥だ。誰よりも。》

はぐれたの？

《分からない。この３日ほど帰ってこないんだ。待ち合わせ場所にも巣にも。
………もう見えなくなるな。帰らねば。明日もココで待たせてくれるか？》

どうぞ！僕がココにいる時は大丈夫。人がいる時は屋根の上のほうがいいかも。

《ありがとう。では失礼。》

哀しい瞳だった。愛する奥さんが帰ってこない。しかも行方知れずなんて。
僕にはどうにもできないけれど、だからこそ、余計に哀しく見えた。

鳥さんは、１度ツガイになると生涯添い遂げる種類が多いの。
僕たち犬は状況にもよるけど、受け入れる準備のあるメスがいれば１度きりの逢瀬でも構わない。
でも鳥さんはご夫婦でエサをたくさん獲ってきてお子様を育てることが多いから、このお相手となら子どもを守れるというお相手を選んで、毎年お子様を生み育てる種が多いの。

で、山に巣を作って、街や田んぼや河原にエサを取りに行くカラスさんたちは、行きと帰りは一緒。情報交換したり敵に襲われにくくなったり…で、お昼はそれぞれの餌場へ行って…だから待ち合わせをする。

結構待ち合わせする鳥さんはたくさんいるんだよ！
ご夫婦単位だったり、群れ単位だったり、ご近所単位だったりは卵やヒナさんの育ち具合や鳥さんの種類によってもまた違うけど。
おっきな待ち合わせなら、ツバメさんがいろんなお家の玄関に巣を作ってご夫婦で夏を過ごして、涼しくなったらもう１つの故郷へまた渡る。その時も河原とかでたくさんのお仲間と待ち合わせしているでしょう？

それぞれにそれぞれの待ち合わせ。

あ、他にも動物たちの待ち合わせは、結構あるんだ〜。鳥さんたちだけじゃないけど、全部お話できないからまた今度ね？

このカラスさんは、大好きな奥さんを待ってる。何年も一緒にいたお相手が、急にいなくなる不安と哀しみを抱えて…。

……けれども、お相手が帰ってこないなら、それは…もっとおっきな鳥さんに襲われたか、事故に巻き込まれたか、地面に降りたところをキツネさんやネコさんに飛びかかられたか？
いずれにせよ、彼女はもうお帰りになれないかもしれないということかも…。