ひとくふう荘 (ページ6)

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『ミヤ……。』
『タマの服高いから、汚れちゃ困るもんね？』
『何？そんな理由！？』

あ、ミヤタさん、余計なことを。
タマさんが一気に不機嫌に……ん？？

『と、とにかく、離せよ。』
『ん…。』

言葉とは裏腹に、ミヤタさんがタマさんを抱っこするお手手が離れないの。
寝転がったままでタマさんとずっとくっついてるミヤタさん。タマさんもおとなしくその胸に抱っこされてて……。

あれ？あれあれ？イイ感じ！

『あのね、タマぁ…。』
『……何だよ？』
『２０歳くらいの時《世界で一番タマが好き》って、俺が言ったの憶えてる？』
『…………憶えてる。』

タマさんの声も少し掠れてる。

『……そか、良かった。明日もドンブリのお散歩、一緒に行こうね？』
『…ちゃんと、お前が起きたらね？』
『寝てたら起こしてね？』

ミヤタさんが、名残惜しそうにそっと手を離した。タマさんは戸惑いながら半身を起こし、ミヤタさんの手を取り引き起こす。

『…OK。起きてなかったらバックブリーカー掛ける。』
『いやいやいや、そこはキスでしょ！？なんで背骨折られんだよ。』
『え………？』
『………あ。』

あ、２人の心臓の音がガンガン強く早く大きくなった！心配になるくらい！！

『わんっ！』

あれ！？つい吠えちゃった！
しまった〜！！お邪魔しちゃったぁぁあ！
僕のひと声にびくりと肩を竦めた２人は、慌てふためいて僕の方へ走ってくる。

うわあ〜ん！ごめんなさ〜いっ！

『ドンブリ〜！たぬ吉でもいたの？』
『ぅ〜わ、ミヤ、後ろ泥だらけ！帰ったら全部洗うから脱いでよ？』
『ああ、ジャージだから構わないけど…でもありがと。お願いしちゃお〜。』
『いや、こっちの台詞。助けてくれて……。』

また、タマさんたちの心臓の音が少し高鳴った。んふふ、今度は邪魔しないぞ！

ところが……あ、ヤバい！

『お〜いっ！宮っち〜、タマ〜！』

軽いフットワークで石段を走って上がってきたのはキタヤマさんだ！
ジャージ姿で首にはタオル。
キタヤマさん、学校でサッカー部の顧問してて、フットサルのサークルにも入ってるから、夜はジョギング行くって言ってたっけ。

何か足音聞こえるなとは思ってたけど、今、ココに来ちゃったかぁ！

『うぃ〜す！お揃いですな〜？
この辺で２kmくらい朝走りたいんだけどさ、いいジョギングコースねぇ？？……ん？２人ともどした？？顔が真っ赤…風邪？』

…ダメだこりゃ。
キタヤマさんたら〜、タイミング悪い〜！