ひとくふう荘 (ページ5)

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どっちかが押したらイチコロなのに、なんで２人とも妙なはぐらかし方すんのかなぁ？？
人間って、１年中ずーっと恋の季節なんだもん。こちらにしてみれば羨ましい限りだよっ？

ちっちゃい兄さんなんて、奥さんといつも仲良しで、夜はお口ペタペタしてたもん。
タマさんとミヤタさんみたいにツンツンしたりされたりもしてたけど、最終的にはとっても嬉しそうに抱っこし合うの。僕、その時の２人から出る、楽しそうな嬉しそうな優しい声が大好きだったな。

僕もね、やっぱり大好きなタマさんには嬉しい顔してごきげんでいてほしいもん。
ミヤタさんとなら、きっと…。

あ、だけどオス同士だったっけ。だから遠慮しちゃうのかな…。でも気に入った相手なら、人間はつがいになれるんでしょ？違うの？

ん〜、よく分かんないや。

『…さ、帰ろか。ドンブリ…。』

ちょっとガッカリした声で、タマさんが僕に呼びかけた。
僕、耳いいから。声を聞けば、相手の気持ちもなんとなく分かるの。…ふむ。どうやらいつものことみたい。
せっかく一緒に住めたから、タマさんが元気になると思ったのになぁ。ミヤタさんも、ちょっと寂しそう？

よし。ここは僕が一肌脱ぎますか！

『…わんっ、わんわんっ！わわんっ！！』
『え！？な、何、ドンブリ？』

久々に吠えたら、声掠れちゃった。ま、いっか。

リードを持つタマさんがビックリしたところで、僕はいきなりダッシュした。

『ぅわっ！？』
『タマっ！！』

僕のリードがタマさんの腕を強く引っ張り、タマさんは体勢を崩して大きな木の根に躓いた。リードが手から離れて、僕は勢い余ってちょっと走っちゃった。

おっと、ちょっとやりすぎた？
タマさん、転けちゃった？？？

慌ててくるんと振り返ると、タマさんは見事に転んでた………ミヤタさんの上に。

『イッテェ…。』
『み、宮田っ、大丈夫！？』

タマさんを庇おうとして、仰向けにひっくり返ったミヤタさんの上にタマさんがうつ伏せに乗っている。
ちょっと２人が触れ合うきっかけになろうと思ったんだけど、触れ合いすぎちゃったかなぁ？
焦ったタマさんが地面に手を付いて身体を起こそうとした。

『タマ…。』

ミヤタさんの左手がぎゅっとタマさんの右手を掴んだ。

『…ケガ、してない？』

心配そうな声。タマさんが息を飲む。

『だ、大丈夫。ミヤは？』
『大丈夫…良かったぁ。』

ミヤタさんは口をパカっと開けて笑う。
で、なんとそのままタマさんをぎゅうと抱っこしちゃった！