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僕の気持ちより先に、僕のしっぽがブンブン回る。

『おっ、おおっ!ドンブリ…!!』

お父さんが僕を見た。
目にぐぐっと力が湧いた。


『ドンブリ〜っ!元気かっ!?おいで!』

お父さんが両手を広げて、僕を呼んだよ!?

僕が思わず走り出そうとすると、タマさんがぎゅっとリードを引いた。
…そうか、呼ばれてもダメなの…?

『玉森さん、ごめんなさい。うちの部署では犬なら触っていいかなぁって言ってたんですけどね、看護部からOK出なくて…。』
『…あー、そうですかぁ。触ったらあかんのか。せっかく会えたのんに……しゃあないことやね。』

お父さんの広げた両手がだらりと下がる。
また、お目目の元気がなくなった。


…ね、お父さん、僕にできることなぁい?


寂しそうなお父さん。
ちょっと痩せたお父さん。
元気のないお父さん。

僕が、お父さんの為にひと工夫しなきゃ!


僕はその場でくるくるくるくる回り出した。
僕のしっぽを追い掛けるように、くるくるくるくるっ!

『おっと、ドンブリ…ちょっと……。』

タマさんがびっくりしたその隙に……。


僕は飛んだ。飛び出した。お父さんの膝の上めがけて!

リードを離してしまったタマさんとミヤタさんと先生が、くりんと目を丸くしたけど、ごめんなさいっ!

膝の上に飛び乗った僕を、お父さんのシワシワのお手手が慌てて支えてくれて、マスクを外す。

『ど、ドド、ドンブリ……っ?』


お腹にグリグリ頭を擦り付けて、僕の匂いを残した。
コレで、会えなくても僕の匂い思い出して、お父さん!
次にペロペロお顔を舐めた。
会えなくても元気出してね、お父さん!
それからお手手をカプッと噛んで、その後またお手手をペロペロした。


大好きだよ、お父さんっ!
大好き大好き大好きーーーーーーーっっ!!!


そうしたらね、お父さんが思いっきり抱っこしてくれたの〜っ。
ぎゅうって痛いくらい。


『……ドンブリっ。俺も大好きやぁ!』


分かってくれたんだ、僕の気持ち!
嬉しいよおぉぉ!

お父さんのお目目からポロンとお水が落ちてきて、僕の鼻にポトン。

知ってるよ?涙でしょー?
哀しい時や嬉しい時に人間って涙が出るの。
お父さん、哀しい??

だけど、ぎゅうと抱っこしてくれる力は強いままで。お顔を見ると、お父さんがパカってお口を開けて笑った。涙はポロンポロン落ちてくる。

良かった、嬉しい涙ねっ!?


僕のしっぽがまた勝手にゆさゆさ揺れた。

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作者名:みあん | 作成日時:2021年10月3日 15時

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