お金のためです。 (ページ3)

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絵心甚八という男ページ3

《もしもし。》

『もしもし。初めまして。一ノ瀬Aと申します。』

《あ、Aちゃんね。手紙届いたようでよかったよ。》

『その件についてなのですが…お断りさせていただきます。』

《…どうして？》

『まず私には、妹たちがいます。5人兄弟です。父もいません。ですから私が日々行っている家事をしなくてはならないんです。』

『それに私はもう…

サッカーと関わりたくないです。』

《まず1つ目のことについては安心してほしい。俺はAちゃんの遠い親戚なのは知ってるよね？もちろん俺が預かって面倒を見ると約束しよう。》

《そして2つ目だ。Aちゃんは俺が認める一番のエゴイストだ。》

『…』

《君のプレーは知ってる。周りを圧倒して突き進んでいき、仲間すら置いていく。そのプレーに俺は惹かれた。
お前はここで終わってはいけない人間では無い》

その言葉には熱が籠っていて、絵心さん自身が本当におもっていることだとわかった。

『そんなこといわれても…』

もうあんなスポーツなんて…

《そして最後に。この件を引き受けてくれた暁には、生活に困ることの無い報酬をやる。》

『…！！それは、ほんとうですか。』

《ああ。約束する。
返事は数日後でいい。また連絡してくれ。》ｶﾞﾁｬ

「…お姉ちゃん、電話どうだった？やっぱりサッカーのこと？」

『…そうだけど大丈夫だよ。
ごめんね、今オムライスつくるね。』

「うん…」

…私は自分でも誇れるほど優秀なサッカー選手だったと思う。
サッカーというスポーツは私がやってきた中で一番面白いと思った。
ボールを追っかけている時には自分に集中出来て、どんどんイメージが湧いてきて、自分のやりたいことが出来る。とても心地いい時間だった。

だけど、

[うちらあんたについていけないわ。1人で楽しいサッカーやってれば。]

『…！！』

良くないことを思い出してしまった。そうだ、もうサッカーはしない。

…しないって決めたんだろ。私。

あの、自分の思い描いたサッカーをもう一度やりたいと思ってしまうのは罪なのだろうか。

でも私には兄弟がいる。わたしがいなくなったら絵心さんにあずかってもらうにしろこまることがあるだろう。なんせ今の我が家の生活はとても貧しく、いい生活とはいえない。

『私は、兄弟を守る。』

prrrr.prrrr ｶﾞﾁｬ
《はい、一ノ瀬美智で『お母さん』…A？》

『ちょっと、相談したいことがあるんだけど。』