【HUNTER×HUNTER】カゾク×ト×ナカマ 2 (ページ10)

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#10　他愛ない日常ページ10

「クラピカもこっちなんですね」

　空港まではレオリオも一緒にいたが、乗る便までは違った。偶然にも同じ便に乗る事になり、Aは一抹の気まずさを感じる。

「そうだ、A。一つだけ言っておきたいのだが良いか？」

「なんですか？」

　首を傾げるAに、彼は一呼吸置いて告げた。

「私はAが好きだ」

　簡潔に、それだけを残す。続けて言う事も無く、それだけを。
　言われた方は緊張させていた肩を下ろし、そんな事かと安堵の笑みを溢す。

「私も好きですよ。みんな、皆大好きです。
だから絶対に会えるですよ」

　喩え敵同士でも、という言葉は飲んで答える。それを聞けば青年も同じ様に笑って、満足そうに頷いた。
　真実を知らない顔は、酷く年相応に思えた。

「あ、来たみたいですね」

　白い雲を抜けようと、楕円の形をした影が現れる。時刻も丁度と二人で乗船しに向かう。
　同時に予約したので席は隣り合っており、改札だけの短い別れをしてからは何となく言葉数も少なくなっていった。
　しかし、ふとして彼は彼女の肩を叩いた。静かな船内、雰囲気として話しにくくそうしたのだろうが。黙って左耳のイヤリングを外したと思えば、空いていたAの手でそれを包む。

「お守り代わり、とでも言っておこう。
無論それだけではない。何故かAには近しいものを感じるんだ。だから持っていて欲しい。嫌ならヨークシンシティで返して貰えれば構わない」

　それまでは持っていろと暗に言いながらも、有無を言わさない強い口調で告げる。苦笑を漏らしつつも、ありがとうですと赤い、緋色の石の嵌まったイヤリングを左耳に付ける。

「これでお揃いですね」

「ああ、そうだな。Aの方が女性だからかよく似合う」

　そう他愛ない会話を続けている内に、目的地となってしまう。
　ようやく本当に別れ、話していた間は気にしないでいた事実が、Aの視界を滲ませた。

「クモ、仇……。
私は、どうしたら、」

　教えて、と唇が動く。
　風が冷たく刺さる。
　凩の季節までは、まだ、程遠い。