退屈な日々に【9K】

小さな命ーfkrー ページ21

最近、なにか違和感がある。

それは主に家で、帰る度になにか違和感があるのだ。


｢A、食器減った？｣

｢へっ？あ、あー、割っちゃって。ごめんね｡｣


彼女はそう言ったけど、どう見たって何か隠しているのは明らかだ。


｢A、このダンボール何？｣


彼女の部屋にダンボールが増えた気がする。


｢ん？あー、んーん。断捨離用に。｣


俺の違和感は膨らむばかりだけど、彼女が笑っていたから、深く聞くことはしなかった。

今考えれば、それが間違いだったのかもしれない。



もはや毎年恒例となったQuizKnockでの12時間クイズ。

それは前後も合わせるとほとんど丸1日オフィスにいることになる一大イベントだ。

旅行が嫌いな俺は、この日以外家以外で寝泊まりすることはまずない。

それを彼女も分かっていたのだろう。


12時間クイズと後始末まで全部終わらせて家に帰ると……彼女は居なくなっていた。


『ごめんなさい。さようなら。』


それだけの淡白な文章のメモと、すぐ側に置いてあった合鍵。

それ以外に彼女の面影を探すことは出来なかった。


彼女の部屋はもぬけの殻。

彼女が使っていたものも、全て無くなっていて、そこには、ただ虚しいだけの空間が広がっていた。


俺は真っ先に彼女に電話をかけた。

しかし、電話は着信拒否されているのか、全く繋がらない。

俺はどうにか彼女と連絡が取れないか思案した。

そこで一つだけ思いつき、不安と焦燥で震える手である人に電話をかけた。


『はいもしもし？福良？』

｢河村！まだ近くにいる！？｣


それは、家が近いからと近くまで一緒に帰ってきていた河村だった。


『え、あー、うん、まぁ。』


俺の声に驚いてか、河村は歯切れの悪い返事をした。


｢ごめん、急に彼女が出ていっちゃって、でも俺からじゃ電話繋がらなくて、河村の携帯からかけたいんだけど、少し貸してくれないかな？｣

『え？携帯貸す？あー、うん、いいよ。え？だめ？いいじゃん。』


河村は今誰かと一緒にいるようで、向こうでなにか会話している。


『えっとね、たぶん公園の名前とか言っても分かんないだろうから道順を説明するとー』


そう言って、河村は公園までの道のりを教えてくれた。


｢分かった。すぐ行く。｣


俺はバックを引っ掴んで家を飛び出した。

河村の説明を思い出しながら走る。

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