天使と悪魔ーkwmrー ページ41
いつからこうなってしまったのか。
いや、ずっと前からすれ違ってたのかもしれない。
「拓哉のそういう所、ほんとに好きじゃない。」
嫌い、とは言えなくてそんな言葉を口にする。
「あぁそう。別に無理して好きにならなくていいよ。」
それは彼なりのフォローなのか、それとも彼の気持ちが私に向いていないということなのか。
無性に悲しくなって、咄嗟に叫ぶ。
「っ、拓哉のわからずや!!」
「あ、ちょ……」
バタンっ
そうして私は1人家を飛び出した。
財布もスマホも何も持たずに。
ーーその日は酷い雨の日だった。
朝から拓哉の体調が思わしくないのはいつもの事で。
そんな彼を笑わせたくて、私はたくさんたくさん明るく振舞った。
でも、彼はいつも以上に淡白な返事しかしてくれない。
そうして1日も3/4が終わった頃、ささいなことで口論になってしまった。
本当は私が彼の体調を気遣って身を引くべきだったのに。
そして口論がデッドヒートして今に至る。
私は冷たい雨にさらされて体が凍える。
でも、それと同時に頭が急速に冷えていった。
そうしてふと、酷く冷たい考えが頭をよぎる。
"このまま別れてしまおうか"
その考えに、天使と悪魔が現れる。
天使は"好きなんでしょ?別れたら絶対後悔するよ?"と言い、悪魔は"今のままでいいの?後々絶対辛いよ?"と言う。
今のままでいいかと言われれば、絶対に嫌だ。
でも、どうしたらいいんだろう。
「A!!」
天使と悪魔が私に語り掛ける声を、拓哉の声が遮った。
私はゆっくりとそちらを向いた。
彼は傘をさしてこちらに走ってくる。
「こんな日に何も持たずに出ていくなんて危ないだろ!」
それは、初めて聞く怒鳴り声だった。
「ごめ、ん……。」
私はそれに素直に謝るしか出来なかった。
ぱらぱらと傘に雨がうちつける音が聞こえる。
私の前髪からは雨が滴っていたけど、彼の前髪は若干の汗で濡れていた。
「走って探してくれたの?」
「……そりゃ、心配だし。」
「そ。」
その瞬間、悪魔が強く語りかけてきて、気づけば言葉に出していた。
「私たち、このまま別れるのもありなのかもね。」
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辰海恋歌(プロフ) - あすさん» 早速読んでいただきありがとうございます。この後どうなるかも一応考えてはいますが、次回の短編集のテーマとは少し合わないと思うのですぐに公開、という訳ではありませんが、必ずあす様の目に留まる形に致しますのでしばらくお待ちください。よろしくお願いします。 (2021年11月5日 0時) (レス) id: e014f887e2 (このIDを非表示/違反報告)
あす(プロフ) - 辰海恋歌さん» 早速続き拝見しました!fkrさんが詰め寄る感じいいですね!続編?半年後fkrさんとどうなっているのか気になります! (2021年11月4日 22時) (レス) id: 14b7e1c0b8 (このIDを非表示/違反報告)
辰海恋歌(プロフ) - あすさん» こんばんは!そういって頂けてとても嬉しいです!最後まで気に入って頂けますと幸いです。 (2021年11月4日 20時) (レス) id: e014f887e2 (このIDを非表示/違反報告)
あす(プロフ) - こんばんは!結ばれる悲劇、終わらない悲劇を読んで切なくもありますがとても気に入りました!続きが気になります… (2021年11月3日 22時) (レス) id: 14b7e1c0b8 (このIDを非表示/違反報告)
辰海恋歌(プロフ) - あすさん» いえいえ!気に入っていただけて良かったです!! (2021年7月17日 23時) (レス) id: e014f887e2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:辰海恋歌 | 作成日時:2021年5月19日 16時