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「落ち着け。河村さんなら大丈夫やから。あの人はこんなことで簡単にどうにかなる人やないやろ?」
川上さんの言葉に混乱しかけた頭がゆっくりと冷えていく。
「河村さんの容態は?」
「まだ、分からない……ここで待ってるように言われて。」
「Aさん。」
その時、丁度看護師さんが私を呼びに来た。
「そちらの方は?」
「あ、私や河村さんと同じ会社の人です。」
「分かりました。では、一緒に来てください。」
看護師さんに3人とも案内され、医師の話を聞きに行った。
医師の話をまとめるとこうだ。
河村さんは怪我自体は大したことは無い。
ほとんどが軽度の打撲や擦り傷。
しかし、頭を打っているようなので本人が目覚めてみないと脳への影響は分からない、と。
最悪の事態が頭を駆け巡る。
河村さんが私のように記憶を失ってしまったらどうしよう。
私はぼろぼろと涙を零した。
その後、伊沢くんが対応してくれて、私はずっと川上さんに腕を引かれていた。
気づけば、オフィスに戻ってきていた。
「A、ゆっくりでいいから、何があったか教えて。」
伊沢くんに促されて、私はぽつぽつと話し出す。
「須貝さんと河村さんと私の3人で帰ってたら駅の大階段を上がったところに一斗……私の後輩が居て、一斗が私を突き飛ばしたの。河村さんは私を庇って……それで……。」
また涙が溢れ出す。
川上さんと伊沢くんが「一斗って誰?」「Aのストーカーです。」「は?何それ。」「色々あって」と話す声が聞こえる。
「A。」
名前を呼ばれて顔を上げる。
伊沢くんと目が合う。
途端に腹の底から恐怖が湧き上がる。
「これは、今回のことは、Aは悪くない。でも、Aがもっと早く誰かに話してれば防げたことでもあるからね。」
「っごめんなさい。」
昼間にも、伊沢くんと2人で話をした時に言われた。
Aは秘密主義が過ぎる、って。
なんでも1人で抱え込みすぎだ、って。
自分ではこれでも頼ってるし、なんなら頼りすぎてるくらいなのに。
「A、とりあえず今日はここに泊まっていっていいから。明日は須貝さんと一緒に警察に行って。河村さんの方には俺たちが行くから。」
「……分かった。」
本当は、河村さんの傍に行きたい。
でも、こうなったのは私の責任だ。
ちゃんとケリをつけないといけない。
「じゃあ、俺一緒に泊まるよ。」
「えっ?」
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続く。
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辰海恋歌(プロフ) - 朱夜さん» こんにちは。どちらも読んでいただけて嬉しいです。応援ありがとうございます。これからも楽しんでいただけますよう、尽力していきます。 (2021年5月22日 16時) (レス) id: e014f887e2 (このIDを非表示/違反報告)
朱夜(プロフ) - こんばんは。 アフターストーリーと新作読みました。 どれも違った感じで楽しいです。 此れからも頑張ってください。 応援してます。 (2021年5月21日 23時) (レス) id: 34fb2aaacb (このIDを非表示/違反報告)
辰海恋歌(プロフ) - 朱夜さん» コメントありがとうございます!書きます!書かせていただきます!!新作もお待ちください!! (2021年5月18日 22時) (レス) id: e014f887e2 (このIDを非表示/違反報告)
朱夜(プロフ) - こんにちは。 更新の度に楽しみにしてました。 もしアフターストーリーがあるのでしたら読みたいです。 新作も楽しみにしてます。 (2021年5月18日 12時) (レス) id: 34fb2aaacb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:辰海恋歌 | 作成日時:2021年4月28日 18時