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「シッマな、水色とか好きやで」
こんなん、と彼が指差したのは黒地に鮮やかなスカイブルーのラインが走ったリストバンド。黒やグレーなど落ち着いた色が好きだと勝手に思っていたが、どうやら違ったらしい。
それでもリストバンドよりはタオルの方が使いやすいのかな、なんて思ったりして。手に取ってはこれではない、これは違うと自問自答して棚に戻す事を繰り返していると、じっと此方を見つめている赤い瞳。
「ええな〜めっちゃ真剣やん。恋してる、みたいな?」
あはは、と朗らかな笑みをこぼす副部長さん。突如として降ってきた核心を突く言葉に違います!と前のめりで否定すれば、またもやニヤニヤと形の良い唇が弧を描いた。
「ふーん……そうかぁ」
「……本当に、違いますから…!」
バレバレの嘘も程々に、ふと淡い水色のスポーツタオルを視界に捉える。何となく肌触りも良さそうな気がして手に取ると、先輩もそれええな、と勝手に品評をする。
「これにします」
直感で、これだと思った。値札の額を見ても、学生にも良心的な価格。レジへ行こうとすると、ひらひらと副部長さんが手を振っている事に気付く。
「シッマも喜ぶと思うわ〜、じゃーね!」
「…ありがとうございました」
正直、副部長さんのアドバイスは助かった。また何かの機会にお礼でもしようと決めて、店員さんに青い袋でラッピングを頼んだ。
***
翌日、四十分程の昼休み。
校舎の一角の空き教室に、サッカー部員達は続々と集まっていた。黒板には”コネシマ 誕生日おめでとう!”とデカデカと書かれ、また全く似ていない似顔絵も描かれており小さく笑みが溢れる。
正面の教卓には、駄菓子や子供向けの知育菓子、そして女子には見せてはいけないと思われるものなど、ラインナップに富んだモノ達が鎮座していた。
私も昨夜買ったプレゼントをこっそりと端に乗せる。誰からです、と名前を記した方が良かっただろうか──なんて考えている間にも、数人に腕を引っ張られ眉を顰めながらコネシマ先輩はやってきた。
「コネシマ、誕生日おめでとう!!」
ぱぁんと勢い良くクラッカーが弾け、祝いの声が上がる。かくいう本日の主役は、面倒だとでも言いたげに眉を顰めていた。それでも口々に飛ぶおめでとうの言葉に悪い気はしないようで、少しだけ照れたように口元に笑みを浮かべていた。
山のようなプレゼントを抱えた先輩。
一瞬その水縹の瞳と視線が重なったのは、きっと私の気の所為だろう。
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ぴざる2号(プロフ) - 泣いた…好き… (2021年4月2日 8時) (レス) id: fa56edbecd (このIDを非表示/違反報告)
夢花(仮垢) - 『夢小説』やなくて『小説』読んでるみたいな感じになるし、ストーリーは面白いし、作者さんええ人やし…この小説の大ファンになりました(単純) (2019年10月30日 15時) (レス) id: 1ce7d18474 (このIDを非表示/違反報告)
aaaa(プロフ) - もうなんか今のこのもどかしさが喉の奥に詰まって泣きそうなくらいにこの作品好きです。応援してます。 (2019年8月7日 0時) (レス) id: 6511620324 (このIDを非表示/違反報告)
Souha - キャーknサンイケメーン((( 内容と作者様の書き方が好きです。!もう…なんかやばすぎました。 あと、更新頑張って下さい!もうこれは全裸待機ですね!! (2019年7月18日 21時) (レス) id: 60f9fe5ef6 (このIDを非表示/違反報告)
usikosan(プロフ) - しゅきやわ (2019年6月8日 14時) (レス) id: a7c2ae121f (このIDを非表示/違反報告)
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