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「ランニングの後だけじゃなくて、走る前にも水分を取っておくのが大事らしいですよ」
「詳しいな」
本の受け売りですけどね、と笑えば、彼はパチパチと瞼を瞬かせた。
「……マネージャーとして、そういうの知っておいたほうが良いかなって思ったんですけど」
言い訳のように唇を尖らせれば、彼はいやちゃうねん、と慌てたように小さく声を洩らした。
「そこまでのやる気無いと思っとったわ」
ふふんと降ってきた笑い声。冗談めかした笑みを浮かべる彼に面食らうが、それは心外ですねと同じように笑みを返した。
見かけよりもとっつきやすい人だな、なんてしみじみと思ったりもして。言葉にしにくいが、今迄に会った事が無いタイプとでも言うのだろうか。それくらい先輩は新鮮に映った。
「部室、もう閉めてきますよ」
俺が、と口にしかけた先輩。その言葉は聞こえないフリをして、彼よりも先に部室へと向かう。すると、おい、と低い声が背後から届いて、思わずびくりと肩を震わせる。何か怒らせたかと恐る恐る振り向くと、エナメルバッグを肩に下げ、そっぽを向く彼を視界に捉えた。
「……校門のとこで待っとるから、はよこいよ」
そう言って自転車置き場に歩いて行く。待ってるってなんだと戸惑うが、先輩を待たせる訳にもいかないので急いで部室に向かった。
辺りはすっかり闇に包まれた。鍵返してきました、とスマホを弄っている先輩の元へ駆け寄ると、ん、と短い返事をして、彼は自転車を引いたまま歩き始めた。
頭が追いついていない私に、俺も帰りこっちやねん、と小さく呟いた先輩。
……ああ、なるほど。慌てて少し先を歩く彼の隣に並んだ。
「……わざわざ、ありがとうございます」
「もう暗いし、女子はそういうの気にした方がええやろ」
一瞬街灯に照らされた彼の横顔は、バツが悪そうに反対側に逸らされていた。なんだか周りの空気がむず痒くて、何を話したら良いか分からない。車輪の回る音と、アスファルトに靴がぶつかる音だけが響く。
「……ここで大丈夫です。ありがとうございました」
ここを曲がり、あと百メートル程行けば自宅に着く。結局、会話のような会話をしないままここまで来てしまった。
「じゃ、また明日な」
特に会話がない事を気にも留めず、自転車に跨った先輩は颯爽と闇に消えて行く。
明日も一緒に帰るのだろうか。気まずいなと思う反面、意外な一面を見れた気がして、会話のネタでも探しておくかと足を早めた。
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ぴざる2号(プロフ) - 泣いた…好き… (2021年4月2日 8時) (
レス) id: fa56edbecd (このIDを非表示/違反報告)
夢花(仮垢) - 『夢小説』やなくて『小説』読んでるみたいな感じになるし、ストーリーは面白いし、作者さんええ人やし…この小説の大ファンになりました（単純） (2019年10月30日 15時) (レス) id: 1ce7d18474 (このIDを非表示/違反報告)
aaaa(プロフ) - もうなんか今のこのもどかしさが喉の奥に詰まって泣きそうなくらいにこの作品好きです。応援してます。 (2019年8月7日 0時) (レス) id: 6511620324 (このIDを非表示/違反報告)
Souha - ｷｬｰknサンｲｹﾒｰﾝ((( 内容と作者様の書き方が好きです。！もう…なんかやばすぎました。 あと、更新頑張って下さい！もうこれは全裸待機ですね！！ (2019年7月18日 21時) (レス) id: 60f9fe5ef6 (このIDを非表示/違反報告)
usikosan(プロフ) - しゅきやわ (2019年6月8日 14時) (レス) id: a7c2ae121f (このIDを非表示/違反報告)
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