12 僅かにも ページ12
大会予定を確認しようと自らの手帳を開いた先輩は、その紙面を覗き込むと顔を戦慄させた。
「……！？…Aちゃんごめん、今日塾の面談だった…」
「…時間、大丈夫ですか？」
やばい、と口パクした先輩。
「部室の鍵閉めて、職員室持っていくだけですよね？やっておきますよ」
その言葉に、先輩は安堵したように深く息を吐いた。そしてごめんね、と申し訳なさそうに肩を落とす。
「何かあったら部長に聞いてね」
了解ですと荷物置き場に走っていく先輩の背中を見送り、暗くなり始めたグラウンドを見渡すと、その人数は既に少なくなり始めていた。
それでも、一向に練習を終える気配のしない人物が一人。……コネシマ先輩だ。
何かを確かめるように綺麗なフォームで蹴られたサッカーボールは、次々と白いゴールに吸い込まれていった。ぼうっとその姿を眺めていると、いつのまにか辺りは静かになり、茜色も深い紺色に変わっていた。
先輩は、額を静かに伝う汗を拭い静かに息を吐くと、ゴールに集まる沢山のボールを一つ一つボールカゴにテンポよく投げ入れていく。そのうちの一つが、カゴには入らずにコロコロと転がった。慌てて拾い上げて同じようにカゴに入れると、少し驚いた表情の彼と目が合った。
「…まだおったんか。ありがと」
「いえ、仕事なので」
キ、と金属が擦れる車輪の音は聞こえないフリをして、倉庫へと運んだ。ふうと息をつくと、ジッと此方を見ている先輩。沈黙に耐えきれなくなって、思わず口を開いた。
「……あの、部室閉めますけど」
「ん？…ああ、やっとくでええよ」
静かな空間に響く練習中よりずっと低い声。そう言って、背を向けて歩いていく彼にどうしようと頭をひねった。
「いやでも、それマネの仕事って聞いて…？」
暗い一面に、仄かに金が揺れる。振り返った彼は、少しだけめんどくさそうに息を吐いた。
「部員を見送んのは、部長の仕事やろ」
は？とつい素っ頓狂な声を上げてしまう。いや、そんな仕事は流石にないでしょうと声をかける前に、彼は部室の方へと再び歩いて行ってしまった。
一年だから信用されていないのか、それとも帰りが遅いのを心配しているのか。……後者だと思いたい。
その日の帰り道、少しだけ遠回りをして近所の書店へと足を踏み入れた。手に取ったのは名前だけ聞いた事のあったサッカー雑誌と、簡単な応急処置について書かれている本。
人一倍練習に取り組み部員達を纏める金髪への、ちょっとした対抗心だった。
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ぴざる2号(プロフ) - 泣いた…好き… (2021年4月2日 8時) (
レス) id: fa56edbecd (このIDを非表示/違反報告)
夢花(仮垢) - 『夢小説』やなくて『小説』読んでるみたいな感じになるし、ストーリーは面白いし、作者さんええ人やし…この小説の大ファンになりました（単純） (2019年10月30日 15時) (レス) id: 1ce7d18474 (このIDを非表示/違反報告)
aaaa(プロフ) - もうなんか今のこのもどかしさが喉の奥に詰まって泣きそうなくらいにこの作品好きです。応援してます。 (2019年8月7日 0時) (レス) id: 6511620324 (このIDを非表示/違反報告)
Souha - ｷｬｰknサンｲｹﾒｰﾝ((( 内容と作者様の書き方が好きです。！もう…なんかやばすぎました。 あと、更新頑張って下さい！もうこれは全裸待機ですね！！ (2019年7月18日 21時) (レス) id: 60f9fe5ef6 (このIDを非表示/違反報告)
usikosan(プロフ) - しゅきやわ (2019年6月8日 14時) (レス) id: a7c2ae121f (このIDを非表示/違反報告)
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