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此処での食事は、共有されている冷蔵庫や貯蔵庫から自由に作っていいらしい。基本的に食事は各自でとることになっており、少し広めのリビングルームには誰もいなかった。エーミールさんは優しさ故かはっきりとは口にしなかったけれど、私の仲間入りを疑念に思う人は少なくないはずだ。未だに何故こうなったのか私さえも分かっていないのだから、当然かもしれない。
静かな部屋は、私にとって都合がいい。今のうちに何か持っていこうと大きな冷蔵庫を開く。飛び込んできた色とりどりの食材は、目にしたことのないものばかりだ。吹き溜まりのような場所で育ったから、まともな食事はしたことがない。本当に食べられるのかも分からない鮮やかな野菜は、どうやって調理するのだろう。
困惑したまま中身と見つめ合っていると、逞しい腕がにゅっと現れる。そして先ほどの不思議な野菜を手に取ったかと思えば、くく、とこぼれ落ちてしまったような笑い声が耳元で聞こえた。
「これ食べたいん？作ったるやん」
「ゾムさん」
お願いしますと口にする前に、備え付けられたキッチンで彼は料理を始めてしまった。次第に鼻腔を擽る匂いに、何度も唾を飲み込む。その強そうな腕っぷしとは反対に、繊細な手付きで作られた料理は丁寧で彼の性格を垣間見る。折角だからとこの場所で、二人並んで食べることになった。いただきます、と誰かと手を合わせたのはいつぶりだろうか。少しだけ視界が歪んだのはここだけの話だ。
「ゾムさんは、どうして此処に？」
「グルッペン殺しにきたら、誘われて楽しそうやったから入った」
「……え」
「元々別の組織入っててん。暗殺してこい言われて来たら、まあおもろそうな奴揃ってたし。ええかなって」
「敵だったってことですか」
「せやね」
穏やかな一面しか見ていない彼の出自は意外だった。ましてや敵組織だったなんて。けれど元々の組織を裏切ることを決められるほど、この場所、そしてその主には魅力があったのだろうか。
「懐かしいなあ」
目を細め記憶を辿るゾムさんの首元には、S/４と刻まれたドッグタグが鈍い輝きを放っている。本で学んだ通りならば、彼は相当強いことになる。本当に彼が？この料理を作ってくれたゾムさんが人ではない力を持っているのだろうか。つきない疑問を他所にゾムさんはとっくに皿を平らげていて、慌てて私もスプーンを口へ運んだ。
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あん(プロフ) - Alexさん» コメントありがとうございます。引き続き楽しんでいただけたらと思います。 (2020年6月29日 9時) (
レス) id: 8ef2d7e6a5 (このIDを非表示/違反報告)
Alex(プロフ) - とても面白かったです！！更新引き続きお待ちしております！ (2020年6月28日 17時) (レス) id: 68d9b196e6 (このIDを非表示/違反報告)
あん(プロフ) - かわっちかわっちさん» コメントありがとうございます。今後も引き続きお楽しみいただけたら嬉しいです。 (2020年6月26日 6時) (レス) id: 8ef2d7e6a5 (このIDを非表示/違反報告)
かわっちかわっち(プロフ) - 初コメ失礼します！お気に入りさせていただきました。投稿無理せず頑張って下さい！ (2020年6月24日 20時) (レス) id: d677453767 (このIDを非表示/違反報告)
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