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シャオロンさんに手を引かれ、辿り着いたのは建物と建物を真っ直ぐに分断するストリートだった。路傍には出店のようなものが開かれ、人の往来も他の場所と比べて多いように思える。寂れた街の側面しか見ていなかったせいだろうか、つい呆気に取られ、歩みが遅くなる。シャオロンさんはあちらこちらに目移りしてしまう私を不思議そうに眺めながらも、歩く速度を緩やかにしてくれる。
「此処は俺らのシマやからさ。安全ではあると思うけど、一応離れんといてな」
「すみません。ありがとうございます」
「ん。何がええかなあ昼ご飯。あ、折角やし、俺のお気に入りの店行こか。俺のっていうか、俺らの、なんだけど」
大通りから、一本路地裏に入った場所。地下へと続く階段が現れる。ここやで、と笑みをたたえたシャオロンさんに続き、緊張を飲み込んで扉を潜った。
茶で統一された店内に、ノイズ混じりの蓄音器が柔らかな音楽を奏でていた。それほど広くはないけれど、数席のテーブルとカウンター席があり、ひとりの老人がぽつりと腰掛けていた。コーヒーの深い香りが鼻腔をくすぐって、一歩踏み入れただけで心を掴まれるのが分かる。
「いらっしゃい。……ああ！シャオロンさん」
「どうも。昼ご飯まだでさ。なんかあったりする？」
落ち着いた風貌の店主の裏には、様々な酒瓶が並んでいる。きっと夜にはバーになるのだろう。シャオロンさんとは見知った仲のようで、私を一瞥すると丁寧な会釈をしてくれた。慌てて頭を下げた私に向かってにこりとシャオロンさんは笑う。
よく笑う人だ、なんて客観的に思っていると、がたりと目の前の椅子が引かれた。顔を上げれば、座って、と目配せをするイエローの瞳があった。
申し訳なさを真っ先に感じてしまう。彼はとても強いマフィアの一員で、私は雑用係。丁寧な扱いを享受していい立場ではない。座らない私を見兼ねてか、疑問符を浮かべた彼は口を開く。
「ほら。どうぞ、Aちゃん」
「……わざわざ、ありがとうございます」
「デートやし。当たり前やん」
「デート？」
「デート。この後も買い物行くし、デートちゃう？あ、俺がただの付き添いやと思ってるやろ。あかんよ？俺も久しぶりの休みやし、楽しむ気で来てるから」
おずおずと腰を下ろせば、机を挟んだ反対側に彼も座る。片肘をつき、少しばかり前のめりの彼と真正面で対面するというのは、初めてのことで緊張してしまう。運ばれてきた水の入ったグラスは、すぐに空にしてしまった。
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あん(プロフ) - Alexさん» コメントありがとうございます。引き続き楽しんでいただけたらと思います。 (2020年6月29日 9時) (
レス) id: 8ef2d7e6a5 (このIDを非表示/違反報告)
Alex(プロフ) - とても面白かったです！！更新引き続きお待ちしております！ (2020年6月28日 17時) (レス) id: 68d9b196e6 (このIDを非表示/違反報告)
あん(プロフ) - かわっちかわっちさん» コメントありがとうございます。今後も引き続きお楽しみいただけたら嬉しいです。 (2020年6月26日 6時) (レス) id: 8ef2d7e6a5 (このIDを非表示/違反報告)
かわっちかわっち(プロフ) - 初コメ失礼します！お気に入りさせていただきました。投稿無理せず頑張って下さい！ (2020年6月24日 20時) (レス) id: d677453767 (このIDを非表示/違反報告)
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