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此処を案内するから、と私の背中を押したのは緑のパーカーを纏った男だった。首元から銀色のタグをぶら下げ、少し長めの横髪がパーカーからちらりと覗いている。
「あ、忘れとった。俺の名前はゾム。そんで、さっき長々と喋っとったのがグルッペン。俺達のボス、ていう感じやね」
廊下を歩く道すがら、ふとその若緑が此方を射抜く。まあいきなり全部は覚えられへんと思うけど、と前置きをして、彼は部屋にいた一人一人の名前と特徴を教えてくれた。当然一度で覚えられるはずもなく、何度も同じ名前を繰り返してしまったけれど、ゾムさんは穏やかに焦らんでええよと肩を叩いてくれた。
「あ、せや。俺とひとらん、大先生、あの部屋にはおらんかったシッマとシャオロンがタグ付き。トントンは未だに分からんねんけど、多分タグ付き」
「あの、タグ付きってなんですか」
「え？そうか、この街の人じゃないから、そりゃ知らんよな」
ううんと考え込むように眉間にしわを寄せたゾムさんは、説明に困っているようだ。タグ付きの「タグ」は、恐らく目の前の彼が付けているような銀色のドッグタグのようなものだと思うが、それがどんな意味を象るかは私には分からない。ただじっと目を凝らしてゾムさんのタグを見れば、そこには”S/4”と刻まれているだけだった。
「まあその辺は、全部エミさんにやってもらお」
うんうんと自分の中で結論付け、ゾムさんは階段を降りていく。所々に蜘蛛の巣が張っていたり、埃が被っていたりと特別綺麗とは言えない此処は、思っていたよりも広く迷ってしまいそうだ。窓から見えた景勝は、庭のような場所が広がっている。寒々しい街に唯一、青々とした色をもたらしていた。
一通りぐるりと建物内を回ると、この場所は灰色のエルガストルムの街の中では随分異質な場所であるらしかった。壁に囲まれたエルガストルムの中に、もう一つ壁に囲まれた隠れ家がある。そう形容するのが相応しいだろう。
「まあ暫くはゆっくりしといたら。まだ本調子じゃないやろうし」
「ありがとうございます。ところで、あのとき私を助けてくれたのって」
「ん？あー。誰やったっけ？ばたばたしてて報告とかも乱れとったから俺も分からんねん。ごめんな」
「そうですか。いえ、大丈夫です」
申し訳なさそうに眉を下げたゾムさんに頭を下げる。確かだったのは、ゾムさんと同じようにタグを付けていた人物だということ。ちゃんと御礼を伝えなければと心に決め、呼び出された場所に向かった。
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あん(プロフ) - Alexさん» コメントありがとうございます。引き続き楽しんでいただけたらと思います。 (2020年6月29日 9時) (
レス) id: 8ef2d7e6a5 (このIDを非表示/違反報告)
Alex(プロフ) - とても面白かったです！！更新引き続きお待ちしております！ (2020年6月28日 17時) (レス) id: 68d9b196e6 (このIDを非表示/違反報告)
あん(プロフ) - かわっちかわっちさん» コメントありがとうございます。今後も引き続きお楽しみいただけたら嬉しいです。 (2020年6月26日 6時) (レス) id: 8ef2d7e6a5 (このIDを非表示/違反報告)
かわっちかわっち(プロフ) - 初コメ失礼します！お気に入りさせていただきました。投稿無理せず頑張って下さい！ (2020年6月24日 20時) (レス) id: d677453767 (このIDを非表示/違反報告)
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