＊ ページ21
「ごめんな。ほんまはこんな話するつもりなかったんやけど」
いえ、と首を振った私の手が離されることはない。ただ何かに縋るようにぎゅうと握りしめながら、彼は言葉を紡いだ。太陽のような人。少なくとも、そう思っていた。けれど、今目の前にいるこの人は。代償のせいとはいえあまりにも儚くて、消えてしまいそうな存在。
手を掴まれると、昔のトラウマを思い出す。路地裏に無理やり手を引かれ、跪くことを強要された。雄の熱りを押しつけられこみ上げる吐き気を我慢する代わりに生きるための金を手に入れていた、あのとき。
それでも、彼の手を振り払うことはできなかった。私以上に、彼のごつごつとしていた掌が震えていたのだから。
「ほんま、ありがとうな。Aちゃんのおかげやな」
「私は別に、なにも。……ただの運び屋で、娼婦なので」
「え？それは昔のはなしやろ。今は俺らの
「え、ああ……。そうですね、マフィアでした」
からりとシャオロンさんが笑う。やはりこの人には笑顔が似合う。心からそう思えた。
「そんなんだと、いつまでたっても馴染めへんで。ここの奴らは、なんだかんだええ奴ばっかやからさ。うるさいけど。俺も協力するし」
「……っありがとう、ございます」
ふたり分の息遣い以外は何も聞こえない静かな夜だ。
思っていた以上に近づいていた檸檬色の瞳。とくり。わざとらしく心臓の音が鳴る。意図せぬところで、鼓動が加速していた。
::
期間空いてしまって申し訳ございません。
また少しずつ更新していくので、どうぞよろしくお願いいたします。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 596人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「wrwrd」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
あん(プロフ) - Alexさん» コメントありがとうございます。引き続き楽しんでいただけたらと思います。 (2020年6月29日 9時) (
レス) id: 8ef2d7e6a5 (このIDを非表示/違反報告)
Alex(プロフ) - とても面白かったです！！更新引き続きお待ちしております！ (2020年6月28日 17時) (レス) id: 68d9b196e6 (このIDを非表示/違反報告)
あん(プロフ) - かわっちかわっちさん» コメントありがとうございます。今後も引き続きお楽しみいただけたら嬉しいです。 (2020年6月26日 6時) (レス) id: 8ef2d7e6a5 (このIDを非表示/違反報告)
かわっちかわっち(プロフ) - 初コメ失礼します！お気に入りさせていただきました。投稿無理せず頑張って下さい！ (2020年6月24日 20時) (レス) id: d677453767 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
