compensation ページ18
時刻、深夜。一面に漂うアルコールの匂い。ゾムさんが恐ろしいほどの早さで皿を平らげている。コネシマさんとシャオロンさんの姿はなく、そういえばあの二人は初めて此処に来たときもいなかったとふと記憶を辿る。
初めての祝勝会なるものに居場所を見つけられないでいると、鬱さんが何気なく隣にやってきた。先ほどまで画面で見ていた凄惨な光景に、進んで食べ物を口にする気になれなかった。懐かしささえ感じる血溜まりの数々、そして肉塊。運び屋として暗がりを駆けたとき、それは決して珍しい光景ではなかったけれど、やはりいいものではない。
「なんでもええから食べときや？なくなってまうで」
「……ありがとうございます」
「いやあ、あんなん見たないよなあ。やっぱり血生臭いのは嫌や」
抑揚のない声の真意はよく分からなくて、白ワインをがぶ飲みするその姿を見つめることしかできなかった。彼はタグ付きであるのに、他のタグ付きのメンバーとは一線を置いたような話し方をする。しかしそこに踏み込めるほど、まだ距離が近いわけでもなかった。
「せや。もしここおるのあれやったら、この書類シャオロンとこ届けてくれへん？あ、直接じゃなくてええねん。部屋の前の棚みたいなとこ置いといてくれればええのんやけど」
「はい。……ありがたいです」
内容はあまりじっくりと目にしないようにして、都合の良い口実を得たと騒がしい部屋を出た。
鬱さんの言う通りシャオロンさんの部屋の前には木製の引き出し付きの小さなテーブルがあった。そこに置けばいいと言っていたけれど、どうせなら直接渡した方がいいのではないかと思う。運び屋の名残だろうか。物音ひとつしない扉に耳を当ててから、二回ノックする。それでも中からの返事はない。どこかに行っているのだろうかと何気なくドアノブに手をかけると、すんなりと扉は開いてしまった。
どうしたものかと不安に思いながら、ちらりと中を覗く。部屋の中は明かりがついておらず、真っ暗だ。恐る恐る一歩踏み込むと、少しずつ目が慣れてくる。そしてふとベットに人影を感じた。どくん、と心臓が鳴る。
「……なんや、何しにきたん」
本当に今のはこの部屋の人物の声だっただろうか。あまりにも覇気がなく、低い声だ。太陽のような声色とは程遠く、陰鬱さを感じる。
「書類渡しに、」
「お前も笑いにきたんか？」
「……はい？」
「……あかん、ちゃうねん。俺は……」
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あん(プロフ) - Alexさん» コメントありがとうございます。引き続き楽しんでいただけたらと思います。 (2020年6月29日 9時) (
レス) id: 8ef2d7e6a5 (このIDを非表示/違反報告)
Alex(プロフ) - とても面白かったです！！更新引き続きお待ちしております！ (2020年6月28日 17時) (レス) id: 68d9b196e6 (このIDを非表示/違反報告)
あん(プロフ) - かわっちかわっちさん» コメントありがとうございます。今後も引き続きお楽しみいただけたら嬉しいです。 (2020年6月26日 6時) (レス) id: 8ef2d7e6a5 (このIDを非表示/違反報告)
かわっちかわっち(プロフ) - 初コメ失礼します！お気に入りさせていただきました。投稿無理せず頑張って下さい！ (2020年6月24日 20時) (レス) id: d677453767 (このIDを非表示/違反報告)
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