仮面ライダー短編集 (ページ1)

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兎さんのワガママ（桐生戦兎）ページ1

「それでね、ここからが面白いんだ！」

目を輝かせて話しかけてくる。
もう30分くらいだろうか。
彼＿＿＿桐生戦兎はずっと
髪のひと束を重力に
逆らわせて熱弁している。
私にはちんぷんかんぷんだ。

『戦兎分かったから。もうそろそろで
夜ご飯作らないと。今日私当番なんだけど』

「えー。ここからなのに…」

彼の大きな瞳が私の目と合う。
上目遣いにはめっぽう弱い。
思わず目をそらしてしまう。

「ねえ。ねえ。そらさないで？」

腕を掴まれて見つめ合う。
地下はそれなりに涼しいはずなのに
身体はどんどん熱くなっていく。
何人もの人を救い、
純粋さをずっと主張している目は
私を見るのには勿体無いくらいだ。

『わ、私もう行くから。』

「駄目。まだ話し終えてない。」

『もう皆もお腹空かせて…』

「料理なんて一海とかにまかせときゃいい。」

『当番は守らないと…』

「いいの。もっと俺の話聞いてて」

私は抱きしめられた。
戦兎の温かさと心臓の音。
私はこれよりももっと熱い。

『分かった。あと10分ね』

恋人になる前より、このワガママに
甘い気がする。