【イナGO】偽りシード (ページ5)

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後輩で部外者でもページ5

冷たい水しぶきが腕などに散るが…彼女は気にせず
勢い良く蛇口から出る水を止める。

手に持ったハンカチを軽く絞りそれを片手に保健室の扉を開ける。

｢みんなを集めてくれ、すぐにだ！｣

途端、焦った様なそんな神童の声が耳に届いた。

何が起きているのかなんとなく察した優衣は溜息を吐き

取り出した絆創膏をもう片手に再度、2人の前へ顔を覗かせた。

｢あの、神童先輩…新入生で部外者の私が言うのもなんですが……

今は休んでいた方がいいですよ。私、傷の手当するので！｣

もう用意しちゃいましたし、と笑った優衣に｢だが…っ！｣と納得いかない様子の神童。

そんな彼を見た霧野は仕方ないな、という様に椅子から立ち上がる。

｢えっと、月詠…サッカー部の事に巻き込んで悪いが、神童のことを少しだけお願いできるか？｣
｢はい、分かりました！手当が終わったら取り敢えず私も教室に戻るので…その時までなら。｣

｢あぁ…新入生だし仕方が無いよ。ありがとな。｣

ふっと柔らかな笑みを浮かべた霧野は優衣の頭にポンっと手を置くと扉を開け去って行った。

その後ろ姿を見送ると、優衣はそっと神童の椅子へ腰を下ろす。

｢本当にすみません…ちょっと失礼しますね。｣

申し訳なさそうに眉尻を下げ彼の腕を壊れものを扱うかの様に優しく掴み、
擦り傷ができている部分に水を含んだままのハンカチを優しくそっと押し当てる。

冷たさとピリッと走った微かな痛みに少し顔を歪める。

｢あの……ほんと、後輩で部外者の私が言うことではないんですが…そんなに抱えていちゃ大変ですよ？

キャプテンだからってきっちりしなくちゃいけないってわけじゃないんですし、
もっと自分のことを大切にしないと逆にみなさんが不安になると思います。

神童先輩、慕われているようですし…いなくなったらきっとみなさん大変だと思います。｣

視線は彼の腕へと注がれているが、

心做しか腕を掴んだ彼女の手の力が強くなっており…

蜂蜜色に光る真っ直ぐな瞳が神童の目に映る。

そんな彼女をじっと見つめていると、何時の間にか手当は終わっていた。

｢はい、これで大丈夫かと思います！それじゃあ、私はそろそろ戻りますね…

キャプテン…頑張ってください！｣

ぺこっと深々頭を下げると彼女はにっこり笑い絆創膏を片付けると

保健室から出ていってしまった。

お礼を言えるまもなく、出ていってしまった彼女の言葉が中々頭から離れないでいた。