【イナGO】偽りシード (ページ4)

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怒りの化身ページ4

ベッドで横たわり目を瞑ったままの神童を心配そうに見つめる彼女を

優しげな瞳で見つめていた霧野は今が入学式という事を思い出しハッとする。

｢それよりお前…新入生だろう？入学式はどうしたんだ？｣

｢あ、すみません！自己紹介が遅れました！

霧野先輩が言う通り、新入生の月詠優衣です。
入学式中にちょっと具合が悪くなっちゃいまして…朝から元々良くなかったので。｣

困った様に眉を下げ笑いながら話す少女…月詠優衣に霧野は

そうか、と彼女同様に心配そうな顔で眉尻を下げた。

｢早く横になった方がいい。隣のベッドを使ったらどうだ？
神童のこともあるし、看病とかは出来ないが…出来るだけの事ならするぞ？｣

｢えっ！だ、駄目です！先輩にそんなことしてもらっちゃ！

それに…霧野先輩と話してると凄く落ち着いて悪いのも良くなりそうです!!｣

軽く身を乗り出し胸元で小さくガッツポーズをする優衣に
なんだそれ、っと霧野は苦笑しつつも何処か楽しそうな様子で笑った。

その時＿＿＿＿＿ベッドで横たわる神童の体がぴくりと動く。

｢ん…うぅっ……｣

小さな呻き声が2人の耳に届き視線は神童へと注がれる。

天井を向いた顔の瞼がゆっくりと開いていき、芯の強い茶色の瞳を覗かせた。

真っ先にその瞳に映したのは霧野…そして次に立ったままの少女を見つける。

｢お前は………｣

｢あぁ、すみません。新入生の月詠優衣です！
具合が悪くて保健室に来たんですけど…

神童先輩を見て心配でそれどころじゃなくなって……大丈夫ですか？｣

戸惑いながらも1歩、1歩とゆっくり近付き

心配そうな表情を浮かべた優衣はこてっと首をかしげる。

新入生、しかも部外者である女の子に心配をかける訳には行くまい、と神童は

微かに頬笑みを浮かべあぁっと頷いた。

彼の笑みに頬を桜色に染め良かったです、と安心しきった表情で優衣は笑うと

じゃあちょっと抜けますね…と彼女は扉近くにある薬品棚の前に立つ。

透明なガラス戸を開け絆創膏など準備しながら神童と霧野の会話に耳を済ませた。

｢お前、"化身"出したんだぞ。｣｢えっ…俺が？｣

｢あんな怖い顔したお前…初めてだよ。余程剣城のやつが許せなかったんだろうな。｣

｢へぇ〜怒りで化身出したんだ。これはフィフスも一時期手を引かざるを得ない。｣

小さくも彼女の耳にはバッチリと届く会話を耳に優衣は

綺麗な蜂蜜色の瞳を怪しげに光らせ、不敵な笑みを浮かべた。