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■25■ ページ27

白い湯気と共に、檜の香りが浴室いっぱいに広がった。
1人で入るには広すぎる浴槽は、薬湯らしき白濁した湯で充たされている。

風呂で涙を流してこいという、肆星さんの指示は的確だった。
熱い湯に浸かって、涙も、悲しみを全部洗い流して、
文字通り生き返った様だった。

それにしても…

ここはどこだろう??

かなり古い建物であることは間違いないけれど、
どこも手入れが行き届いていて、大切にされている事が分かる。
それに広大な敷地。
浴室に来るまでの長い廊下からは、日本庭園の中庭が見えた。

こんなに立派な建物はこの町にいくつも無いだろう。
私の知らない公共の施設…??

□■□■□■□■□■

「え…、ここ肆星さんの家なんですか?」

まさか、ここまで立派な建物が個人宅だとは思わなかった…
さすが最高の呪力を誇る鏑木一族…

「…そうだ。今は私1人で住んでいるから、好きなように使ってもらって構わない。」

…好きなように使う…??

「あ、でも、私もう帰ります。
危ない所を助けていただいた上に、お風呂まで借りちゃって…
ありがとうございました。」

お礼を言って立ち去ろうとする私の腕を、肆星さんが掴んだ。

「いや…今日からはこの家に住んでもらう。」

「え…??」

「倫理委員会議長からの直々のご命令だ。
…この意味がわからない程、子供でも無いだろう??」

肆星さんの琥珀色の瞳が光る。
仮面姿も迫力があるけれど、素顔でも迫力のある人だ…

「…とりあえず、私に拒否権は無いって事は分かりました…」

肆星さんは満足そうに頷いて、掴んでいた手を離す。

「そうだな…一旦朝飯にしよう。それからAの家に荷物を取りに行く。」

私にはなんの決定権も無いらしく、どんどん話が進んでいく。

「…実を言うと私は、あまり料理が得意では無い…
口に合わなかったらすまない…」

神栖66町最強と呼ばれる肆星さんでも、苦手な事があるのが意外だった。ばつの悪そうな顔をしているのが何だか可愛らしい。

「あの…台所をお借りして良ければ、私が作ってもいいですか?」

肆星さんは私の提案を快諾してくれた。

台所で軽めの朝ご飯を作り、食卓に並べる。

肆星さんの口に合うか心配だったけれど、
どうやら問題は無かったらしい。
やたらと褒めてくれた。

トラバサミの味噌汁をすすりながら、お椀越しに肆星さんを見る。

肆星さんの素顔を知る人は神栖66町でも数人しかいないという噂だ。
そんな肆星さんの色々な表情を見て、不思議な気分だった。

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設定タグ:新世界より , 鏑木肆星   
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- 初コメ失礼します。私は鏑木さんが大好ぶt… 大好きなのでうれしいです。続きを楽しみにしています。 (2021年6月16日 18時) (レス) id: da1440f3b3 (このIDを非表示/違反報告)
珊瑚 - 最近碧さんの書かれるこのお話を知りました。新世界よりの夢小説はなかなか珍しいので続き楽しみに待ってます。 (2020年1月27日 22時) (レス) id: 98e28c3fa5 (このIDを非表示/違反報告)
- LiLi様 コメントありがとうございます!! 先は長いですがゆっくり進めていこうと思ってますので、気長に待ってて下さい(´▽`) (2019年8月31日 9時) (レス) id: 79787a8d8f (このIDを非表示/違反報告)
LiLi(プロフ) - 新世界より、わたしはアニメにどハマりしました!!!すごく嬉しいです!更新待ってます応援してます(*゚∀゚*) (2019年8月30日 1時) (レス) id: 844718911f (このIDを非表示/違反報告)
- かなと様 ご指摘ありがとうございます。不注意でした…フラグ外しました。 (2019年8月24日 20時) (レス) id: 5ef3e2de9e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名: | 作成日時:2019年8月24日 19時

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