■19■ ページ21
そのバケネズミは奇狼丸と名乗った。
「奇狼丸、あなた達はここで何をしているの??」
奇狼丸は明らかに戦装束で、戦に来ていることは明らかだったけれど…
「我が同胞、塩屋虻コロニーより援軍の要請を受けました。どうやら外来種の土蜘蛛コロニーと衝突しているようです…
…ご心配なく。神様には我々の先鋭に護衛をさせ、町まで送り届けさせますので…」
「…待って、奇狼丸。私もそこに連れて行って欲しいの。」
そこに、他の1班のメンバーもいるかもしれない…
少なくとも闇雲に探すよりは効率がいいはず。
呪力をが戻った今なら何とかなるだろう。
奇狼丸の目が鋭く光る。
「申し訳ございませんが、それは出来ません。
倫理委員会より、若神様を危険に晒すことは禁止されております。…逆らえば、私は死を賜わることになるでしょう…」
奇狼丸が忠実なのは、あくまでも大人達だけ…
本当はこんなことはしたくなかったけれど、背に腹はかえられない。
私は呪力で手の上に炎を作った。
「奇狼丸…私はまだ子供だけど、呪力は使える…
女王の命が大切だったらよく考えて…」
奇狼丸の瞳の奥に明らかな恐怖の色が浮かんだ。
「…かしこまりました…ただし、ご無理はなされぬようお願いします…」
□■□■□■□■□■
その後、土蜘蛛と塩屋虻の戦いに合流した大雀蜂軍は、
圧倒的な強さで外来種達を蹴散らした。
様子を見ながら呪力で援護しようと思っていたが、その必要すらなかった。
「「A!!」」
聞きなれた2人の声が聞こえた。
振り向くとそこには泣きそうな顔をした早希と覚がいた。
どこか不穏な気配を宿したバケネズミと一緒に…
私達はそのまま奇狼丸に付き添われ、カヌーを止めていた場所に戻った。
瞬、真理亜、守と合流し、涙を流して再会を喜んだ。
「神様方…どうかご無事で…」
私達がカヌーに乗り込むのを確認して、奇狼丸が言った。
「奇狼丸…今回は、力を貸してくれてありがとう。
それと…脅すようなことを言ってごめんなさい…」
私は奇狼丸に謝罪をした。
「いえ、ご友人のための勇気ある行動でした。
誰にでもできる行動ではありません…
それでは、またいつかお目にかかる機会があれば、その時を楽しみにしております。」
私と奇狼丸は固く握手を交わした。
こうして、私達の短い夏季キャンプは幕を閉じた。
それぞれの胸の中に、私達の社会の闇を抱えたまま…
11人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
銀 - 初コメ失礼します。私は鏑木さんが大好ぶt… 大好きなのでうれしいです。続きを楽しみにしています。 (2021年6月16日 18時) (レス) id: da1440f3b3 (このIDを非表示/違反報告)
珊瑚 - 最近碧さんの書かれるこのお話を知りました。新世界よりの夢小説はなかなか珍しいので続き楽しみに待ってます。 (2020年1月27日 22時) (レス) id: 98e28c3fa5 (このIDを非表示/違反報告)
碧 - LiLi様 コメントありがとうございます!! 先は長いですがゆっくり進めていこうと思ってますので、気長に待ってて下さい(´▽`) (2019年8月31日 9時) (レス) id: 79787a8d8f (このIDを非表示/違反報告)
LiLi(プロフ) - 新世界より、わたしはアニメにどハマりしました!!!すごく嬉しいです!更新待ってます応援してます(*゚∀゚*) (2019年8月30日 1時) (レス) id: 844718911f (このIDを非表示/違反報告)
碧 - かなと様 ご指摘ありがとうございます。不注意でした…フラグ外しました。 (2019年8月24日 20時) (レス) id: 5ef3e2de9e (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:碧 | 作成日時:2019年8月24日 19時