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それから毎週1回のペースで特別授業があった。
鏑木肆星さんのアドバイスは的確だったし、教え方も分かりやすかった。
私と瞬の呪力の腕ははみるみる上達していった。
この特別授業以外の授業は、悪鬼と業魔の授業や、テスト、作文が殆どで、とんでもなく退屈だったので、この頃は専らこの授業だけを楽しみに全人学級に通っていた。
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そろそろ他の生徒が入学してきそうな時期の、何回目かの授業の日。
その日は前日の夜から強い雨が降っていて、水路が増水気味だった。
念の為授業を休んだらどうかと言う両親を押し切って、私は学校に来ていた。
普通の授業日ならまだしも、今日は特別授業の日なのだ。
少し遅れて学校に着くと、鏑木肆星さんと遠藤先生は既に教室で待っていた。
遠藤先生は水路が増水したので瞬が休みになった事を告げると、臨時の職員会議があるからと、いなくなってしまった。
2人きりになってしまった私は、
いつにも増して緊張していた。
緊張しているのを悟られないように、課題に集中する。
今日の課題は粉々になったガラス瓶の修復だった。
先週は2.3の破片に割れたガラス瓶の修復だったが、難易度はそれよりも格段に上がっていた。
私は粘土のように全ての破片を混ぜ合わせてから、もう一度形を作り直すイメージをした。
「…そうか。全て混ぜ合わせたか。…悪くない。」
「わっ!」
驚いた衝撃で修復されたガラス瓶は再び破片に戻ってしまった。
いつもは教壇にいる鏑木肆星さんが、瞬の席、つまり私の隣の席に座っていた。
いつもよりもずっと近いところに鏑木肆星さんがいる。
スラリと伸びた長い足を組んで、片手で頬杖をついていた。
シャープな輪郭に細い鼻梁、形の良い薄い唇。
男の人なのに、すごく綺麗な人だなと、そう思った。
「…続けて。」
「…でも、鏑木先生にそんなに見られたら緊張します…」
「先生はやめてくれないか。どうも性にあわない…」
返って来たのは予想外の答えだった。
「じゃぁ…、鏑木肆星さん…?」
「…長いな…」
「じゃぁ…」
鏑木さん…、と言おうと思ったけれど。
「…肆星、さん?」
町一番の呪力の持ち主に対して、失礼かなとも思ったけれど…
「…構わない。その代わり…」
「??」
「私も名前で呼ばせてもらおう。A。」
初めて会った時から変わらない、よく通る、低い声。
肆星さんは殆ど隠れたその顔に、小さな笑みを浮かべた。
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銀 - 初コメ失礼します。私は鏑木さんが大好ぶt… 大好きなのでうれしいです。続きを楽しみにしています。 (2021年6月16日 18時) (レス) id: da1440f3b3 (このIDを非表示/違反報告)
珊瑚 - 最近碧さんの書かれるこのお話を知りました。新世界よりの夢小説はなかなか珍しいので続き楽しみに待ってます。 (2020年1月27日 22時) (レス) id: 98e28c3fa5 (このIDを非表示/違反報告)
碧 - LiLi様 コメントありがとうございます!! 先は長いですがゆっくり進めていこうと思ってますので、気長に待ってて下さい(´▽`) (2019年8月31日 9時) (レス) id: 79787a8d8f (このIDを非表示/違反報告)
LiLi(プロフ) - 新世界より、わたしはアニメにどハマりしました!!!すごく嬉しいです!更新待ってます応援してます(*゚∀゚*) (2019年8月30日 1時) (レス) id: 844718911f (このIDを非表示/違反報告)
碧 - かなと様 ご指摘ありがとうございます。不注意でした…フラグ外しました。 (2019年8月24日 20時) (レス) id: 5ef3e2de9e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:碧 | 作成日時:2019年8月24日 19時