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side.you
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『俺があの後生きていたとしても、金も愛する人も失ったんやし、結局こうなってたと思うで』
暗くて低い声とは違って、吹っ切れたような表情をしていた。
“雨にコロサレタ”なんて初めて聞いたし、なんでこの人がこんな目にあわなきゃいけなかったんだろう。
どんな思いで、死後の世界にいるのだろうか。
立ち上がった男性の足元と頭部は完全に透けてみえなくなっていた。
「あの、」
『ん?』
「私に話してくれて、有難う御座います…」
そう言うと男性は驚いた表情をした後、にっこり笑った。
これで合っているのか分からない。
けど、この気持ちを誰にも言えず、1人でずっと抱え込んでいた辛さを、裏切られた悲しみを、わかってあげたかった。
『…Aちゃんって、ほんまにいい子なんやな』
そう言いながら、身体がどんどん透けていく。
それと同時に、雨も弱くなっていく事に気付く。
『…初めてや、話を聞いてくれて…俺をわかってくれようとしてくれて…』
この男性とベンチで話し始めた時、こう言っていた。
__
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『俺が話しかけてもな、皆逃げてくねん』
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今考えれば、この男性を通り過ぎた時の違和感とは、半透明に透け、空から降る雨が身体をすり抜けていた事だった。
「私で、よかったんでしょうか…」
『何言ってん、Aちゃんでよかった…』
______そう言いながら、
目から涙を流した男性は雨とともに完全に姿を消した。
屋根によって雨から守られていた地面に、
1粒のシミを残して______
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【怪雨】
怪雨(かいう)は、「その場にあるはずのないもの」が空から降ってくる現象を指す。
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古舘(プロフ) - 蛍さん» 読んでいただき有難うございます、感想も頂けて嬉しいです*。 (2022年9月13日 22時) (レス) id: 2c80c0e490 (このIDを非表示/違反報告)
蛍(プロフ) - レトさ?のお話辛いもの9割でツラツラなんですが、話の作りや文章の工夫がすごくて読む手が止まりません!ありがとうございますm(_ _)m (2022年5月30日 19時) (レス) @page42 id: 4b8bfd7105 (このIDを非表示/違反報告)
古舘(プロフ) - とまとさん» 主人公の「」とレトルトの『。』の中を、PCであれば左クリックしながらなぞって頂くか、スマホであれば長押しして「」の中を検索にかけて頂くと…*°お手数お掛けしますが、こちらをお試し下さい! (2021年8月14日 15時) (レス) id: 6d4dc67ed0 (このIDを非表示/違反報告)
とまと - すいません最後のレトくんのお話の『。』の意味がわからないんですけどどういうことですか? (2021年8月14日 15時) (レス) id: 6d36e78e24 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:古舘 | 作成日時:2021年7月6日 1時