あの日の嘘と優しさと 3 (ページ8)

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あ「…ぁ、えっと……
　来、ましたけど、すぐに…帰ったはずですが…」

宏「あ、やっぱり… あのー…
　アイツ、そん時…何か言ってなかったっすか？」

あ「え……っ、と。」

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……探るような彼の喋り口。

あ「それは…なんで、でしょうか。」

宏「いえ、……ね。実は…
　今日…無断欠席してるんです。
　サボりに関しては常習犯なんですけどね？

　学校を、無断で休むなんて…今までなくって。」

あ「……えっと、…特には。」

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突然のことに、

絶え間なく訪れる動悸のせいで
どこを見てればいいのか判らなくって

下に向けたままの黒目の行く先が
どうしても定まってくれない私に…

宏「っと、ホントに……何も？」

あ「はい…」

宏「実は、昨日から様子がおかしくって、
　見掛けたアイツを
　呼び止めようか、と思ったんですけど。」

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宏「あまりにも速足で
　保健室の方に歩いてくもんだから諦めて。」

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宏「出てきた時に捕まえようと思ったんすよね。」

目の前で、薮先生の口からゆっくり発せられる

言葉のひとつひとつが、右から左に流れてく中

昨日の会話、そして

軋むベッドの、無機質な音や
伴って漏れる熱っぽい声たちを

まさか…まさか、

彼が耳にしていたんじゃないか…だなんて。

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そう、疑い始めて

動揺している自分の気持ちが、

いつまでも鳴り止むことない心臓音となって
耳の奥で耳鳴りのようにずっとずっと反響するのを

かき消そうと、私は思わず喉奥をごくっと鳴らす。

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体育教官室からの保健室は
位置的に斜向かいの方向に設けられてて

目視できる位置ではあるが
実際、かなりの距離が有る。

＿＿＿＿＿＿＿だからお願い。

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宏「薄暗くなっても、電気が付かなかったんで
　いつの間にか帰ったんだって、勝手に思って

　俺も疑わずに
　そのまま帰っちゃったんです、けど…ね。」

あ「…、っ」

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それを聞いてすぐ、一瞬、安堵の息が漏れたけど

すぐに、昨日の様子が脳裏に浮かんで

彼のことが心配になって不安になった…

宏「やーっぱ、呼び止めときゃよかったかな…」

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そんな小さく発せられた呟きは

物思いに耽ってた私の耳には入らなかった。

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