【とうらぶ】０から始める刀剣乱舞

43.事件の予兆は ページ43

先輩に褒められたりするのが嬉しくて積極的に物を運んでいたりした私は

中学三年生になっても部活で使うテントを率先して一人で運んだりと、そこらの女の子よりは重いものも持てる方だと思っている。

男子にも引かれるレベルで重いものを持っていたし、手伝うよというのを断ってまで一人で運んでいたから…うッ、なんか古傷が裂けてきた。

そんなんだからモテないんだ。辛すぎる。


まあ、とにかく普通の子よりは少しだけ腕力には自信があるわけで。

今も頑張ってるんだけど。


右腕にはシャンプーやリンス、ボディソープとバスタオル。

で、右隣を歩く山姥切さんとは逆側の左腕にフライパンや包丁やまな板などの基本的な調理道具を入れた袋を下げ、脇では布団を抱えてる。

右手の指に引っ掛けてかろうじてトイレットペーパーも持っているのですが、どれか一つでも落としたら死ぬ。

たぶん拾うことが出来ないと思う。


｢一刻も早く帰らなくては……｣

｢…っはぁ、新しい修行か…？これは…｣


山姥切さんが苦しそうに呟いたのが聞こえた。

その後小さくぼそ、と『そんなわけないか……写しなんか鍛えても仕方ないしな』というのも聞こえる。

…昨日自己紹介したときや、今日のお店の様子でなんとなく分かったけど、この人は少し心が折れそうになるとものすごくネガティブなる。

ものすごくひねくれる。


(確かに鍛える為ではないけれど……)


そう言われてしまうと、なんか。


(……帰ろ)


山姥切さんには感謝の気持ちを込めてたくさん食べてもらわなくては…。

今日買った和食レシピ集もあるし、これで心強い。

行きは楽しかった道も、今はとにかく短くあってほしいと思ってしまう。

これで荷物が少なかったらもう少し楽しんで帰れたんだろうけど。


(なんか、彼にはもっと、自信を持ってほしいな)


そのためにどうすればいいかはまだ思いつかないけど。

とりあえず重い荷物を持たせてしまったことは帰ったら土下座して謝ろう。

たとえネガティブになっても、明らかに嫌悪感を漂わせながら口に出してくれるので助かる。こちらも対処しやすいし。

そして、本気で謝られたり怒られたりすると焦ってしまうようなとても面倒くさい人で、でも本当はちょっと優しいということはこの丸1日でなんとなく分かっている。



…肩がズキン、と痛んだ。


荷物を持っているから起こったのではないような謎の痛みに首をかしげながら、私は布団を担ぎ直して、山姥切さんに並んで歩いた。

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