36、＊ ページ13
Ｃside
Ｙ｢Ｃ｣
｢何？｣
Ｙ｢ありがとな……薮としてだと言いにくくてさ｣
それまで被っていたフードも外して、あのくしゃっとした笑顔で僕を迎えてくれた。
｢宏太……傷残っちゃうね｣
Ｙ｢いいよいいよ。外から見えなければ問題ないからな｣
そうは言っても、痛そうなのは変わりなくて。
ベッドの横の椅子に座ると、夏なのにしんみりとした寒さが胸を締め付けていた。
Ｙ｢知念、こっち来い｣
｢え？｣
いつになくしっかりとした声色で呼ぶものだから、僕もビックリして。
Ｙ｢ここ、座って｣
ポンポンとベッドの上を叩いて示してくる。
｢良いけど……どうし─｣
宏太の隣に座ったかと思えば、目の前は真っ暗になった。
気づけば、宏太の腕の中で。
動いたら傷が痛むに決まってるから、僕も抜け出せなくなっていた。
Ｙ｢大丈夫だからな｣
衝撃で声が出なかった。
Ｙ｢俺は、平気だ。Ｋだって、Ｈだって、あいつらだってな｣
｢何、言ってるの……｣
本当に、話の糸口が見えない。
Ｙ｢俺が今一番心配なのは、Ｃ、お前だ｣
胸が詰まった。
体が固まった。
知られたくなかったんだ。
でも、通りすぎていった過去を捨てられなくて。
どうしても強がってしまう自分が嫌なのに
表には、出したくなかった。
だけどやっぱり、だよね。
Ｙには＿＿＿＿＿
宏太には、分かっちゃうんだ。
Ｙ｢溜め込むな。全部吐き出すんだ……俺をＹだと思って。見ず知らずの他人で構わない｣
溜め込むな＿＿＿＿＿
恥ずかしいと思っていた。
感情なんて消えたと思い込んでいた。
でも心はぽっかりと空いたままだったらしい。
Ｙ｢Ｃも泣くんだな｣
｢ちょっ！止めてよ！｣
Ｙが生きてる。
一度は生命の危機まで感じたけど、体温を感じると、生きてるって。
そう思ったらまた涙が溢れてた。
Ｙ｢いいよ、ずっとこのままでも｣
｢本当？｣
兄のような落ち着き様に、甘えたくなった。
Ｙ｢俺には……これしかやれないからな｣
｢そんなことないよ｣
“慰め”という名の愛情を初めて注いでくれたのは、Ｙでした。
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作者名：柊 | 作成日時：2017年11月18日 23時
