9、何してるの? ページ32
手紙を読み終わったあと、後悔した。
伊野ちゃんが一番気にしていることを知ってしまったみたいで、知ったのに心残りが生まれていた。
ニノくんはどう思っているのだろうと見上げると、そこには別人の顔をした彼がいた。
不安に怯えている?
そうとも取れる眼だ。
「ニノ、くん?」
「……」
ニノくんには俺の声さえも聞こえていないようで、伊野ちゃんに歩みを進めている。
「ニノくん?どうしたんだよ!しっかりしろよ!」
眠っている伊野ちゃんの右腕を持ち、制服の袖を捲り上げる。
「なんだよ…これ……」
辺りが静寂に包まれる。
デジャブだ。
「……やっぱりね」
やっぱり?
こんなに傷だらけの姿をその一言だけで片付けるのか?
「伊野尾君は置いといて、問題は高木君と八乙女君だよね。伊野尾君には申し訳ないけど、手紙を見た以上はあの二人は守らなきゃいけない」
今までの、ニノくんじゃない。
そう感じる度に首を横に振り考えることを止めようとしているが、どうしても聞こえないんだ。
優しいし、雰囲気も安心する。
ただこの手紙を見てから何かが可笑しくなったんだ。
「ニノくん。隠してる?」
きょとんとしてこの質問の意味が分かっていないようだった。
「絶対、何かある。悪い人じゃないって信じてるから。だからいつか、早い内に話してよ」
もうこの空気に耐えられなくて、保健室に伊野ちゃんを残したまま雄也と光の元に向かった。
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作者名:柊 | 作成日時:2017年9月18日 15時