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「なぁ、伊野ちゃん?フード外してくれないの?」
フードと言う単語だけに敏感に反応する伊野ちゃん。
「顔にトラウマがあるとか?それか、顔を見せたくないだけだと思うけど、誰かから逃げてるとか」
あ、それはないか。
「だーいたい合ってるよー」
「え!?ちょちょちょちょっと待って!」
「んー?」
伊野ちゃんってこんなにテキトーなの?
「前の学校では、テキトー王子ってあだ名が付いたほどだねー」
「初めからそれ出せばよかったじゃん!身構えちゃったじゃん!」
「あ、でも今朝のが素だから」
え、てことはキャラ作りってこと?
「キャラとかめんどくさくてー。でもさー?今みたいにもう口調が浸透しすぎてこうなっちゃうんだよ」
「はぁ」
もう訳が分からなすぎてため息しか出てこない。
「俺は、ずっとこのままのつもりだからねー」
「分かったよ。無理に外したら嫌われそうだし、止めとく」
「別に外したら外したで何も言わないよ?嫌いになんてならないし。ただ、秘密にしてもらうけどね」
何を?
顔のことか?
俺、秘密にすることだけは得意なんだよ!
←どの口が言ってるの?
「秘密にするの苦手そうだしやっぱり見せないわー」
「え!そんなぁ」
「自信満々って顔してたから不安で不安で」
自信満々が悪いこととは思わないよ!?俺はね!
「ねーねー。大ちゃんって、警察さんにお仕事依頼されたりしてるんでしょ?凄いよね〜」
「そ、そんなんじゃないよ。大体、謎解きが好きなだけで、見ているのが好きだから、実際に事件を解決するのは山田だし」
へぇ〜そーなんだ〜。
呑気な声でにっこりと笑う伊野ちゃんが、この時だけは不気味に感じた。
フードでこの声でこの口調だったら不気味にも感じるか、と頭で解決したんだけどね。
スマホのニュースで昨日の盗難事件を取り上げていた。
また怪盗グレーの犯行だろう。
この名前の由来?
グレーのフードを被ってるからだよ。
日本の警察って単純w。
人数もはっきりとしていない。
今まで伊野ちゃんと話していたことを忘れていて顔を上げたけど、
伊野ちゃんの雰囲気が変わったら気がした。
儚く今にも消えてしまいそうな。
表情は分からない。
でも確信があった。
どこにも消えてほしくなくて、伊野ちゃんの手を掴んだ。
伊野ちゃんははっとして俺を見た。
俺、背が低いから高い伊野ちゃんの顔がちらっと見えちゃったんだ。
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作者名:柊 | 作成日時:2017年9月18日 15時